【感想】「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」(兵庫県立美術館、2019/6/1~7/21)レビュー

兵庫県立美術館で2019年6月1日から7月21日にかけて開催されている「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」に行ってきました。平日(6/12水)だったこともあり、チケット売り場も会場内も空いていて、ゆっくり鑑賞することができました。音声ガイド(520円)は、声優の梅原裕一郎さんが担当されており聞きやすい解説でした。

兵庫県立美術館「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」兵庫県立美術館「印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション」

 

展覧会の構成は、全部で3章からなります。
1章:印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~
2章:フォーヴから抽象へ ~モダン・アートの諸相~
3章:エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~

 

見事なまでに有名画家の作品のみから構成される贅沢な展覧会でした。一企業である吉野石膏株式会社だけで、よくぞこれほどのコレクションが揃ったものだと感心します。今回の展覧会では、19世紀後半のフランスで活躍したバルビゾン派から始まり、印象派、フォービスム、エコール・ド・パリという流れになります。

 

1章では、モネ5点、シスレー6点、ルノワール7点、ピサロ6点を中心に印象派の代表作家の作品が充実していました。モネらは、絵の具を混ぜることによる明度の低下を防ぐために筆触分割という、キャンバス上に原色を置き並べ鑑賞者の視覚の中で混色させるという技法を用いましたが、改めてその様子がよくわかりました。

 

2章では、ルオーから始まり、ボナール、マティスと続きます。アンリ・ルソーの作品は「工場のある町」の1点だけでしたが、建物と比べて異常に小さく描かれた人の姿が何とも不思議な空間を醸し出す魅力的な作品でした。個人的に好きなカンディンスキーの作品も、その独特な幾何学模様と色彩が見事に呼応していました。

 

3章のメインは質量ともにシャガールです。シャガールの作品を観ていると、恋人たちやそれを見守る天使の姿に目に見えない愛の美しさを感じて心が奪われます。霊能者でもあったと言われるシャガールには、現実にそうした天使の姿が見えていたのかもしれません。

 

一方、「夢」という作品は、第二次世界大戦を挟み完成するまでに約5年がかかっていると言われます。その間、最愛の妻ベラを亡くし、しばらく絵筆を取ることができなかったとも言われています。そうした背景に思いを巡らせながら、絵のなかの幻のような妻ベラの姿と、食卓にひとり佇むシャガールの姿を観ると何とも言えない感情が込み上げてきます。

 

以上、全部で72作品からなる展覧会ですが、通常の展覧会と比べて決して作品数が多いわけではありませんが、十分満足できる内容でした。タイトル通り、印象派からその先の流れがよくわかる展覧会になっていました。

 

2019年06月13日