【感想】「宮崎興二の4次元ミュージアム」展(西脇市岡之山美術館、2020/6/2~12/6)レビュー

西脇市岡之山美術館で開催されている「宮崎興二の4次元ミュージアム」展(会期:2020年6月2日~12月6日)に行ってきました。この展覧会は、前期と後期に分かれており、今回は前期開催分を鑑賞しました。

 

宮崎興二氏は、アートとサイエンスをつなぐ多面体や多次元のかたちの研究で国際的にも知られている方で、現在80歳を迎えられています。今回の展覧会では、1964年から2020年にかけて、ライフワークとして描き続けられてきたという水彩作品シリーズ《夢幻次元のパノラマ》16点も展示されています。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

Ⅰ 第1室 4次元のかたちの成り立ちを紹介する部屋
Ⅰ/Ⅱ 連結部分 ゾムツールによる模型
Ⅱ 第2室 さまざまな4次元の風物の手描きによる具象画
Ⅱ/Ⅲ 連結部分 ゾムツールによる模型
Ⅲ 第Ⅲ室 《夢幻次元のパノラマ》と《幽玄次元のパノラマ》

 

展覧会のタイトルに含まれている“4次元”という言葉は、いわゆる“縦・横・高さ・時間”という通常の意味での4次元を意味しておりません。解説によると、“縦・横・高さ”の3次元は同じですが、4つ目の次元が“超上下”になっています。その意味するところはわかりにくいのですが、それを直感的に説明しようとしたのが、第1室の作品群になります。

 

例えば、展覧会チラシに掲載されている《4次元のアインシュタイン》という作品がありますが、これを見ますと、ある意味でキュビスム的なイメージに近いものを感じます。ただ、ピカソの作品では、心の内面をも表現しようとした多次元作品になっていましたが、こちらの作品はもっと科学的に処理されているようです。

 

そして、この4次元作品の応用形が、第2室の作品になっています。ここでは、斎藤幸恵、塩崎学、山口哲、神戸大学生といった方々による手描き作品が展示されています。これらの作品は、そのタイトルからその意味するところが見えてきます。心地よいリズム感のある作品に仕上がっています。

 

第3室では、宮崎興二氏が50年以上を費やして制作された水彩抽象画《夢幻次元のパノラマ》16点と、水彩8というCGソフトを使って半日あまりで描いたという《幽玄次元のパノラマ》12点が展示されています。それらの作品が何を意味しているかは、よくわかりませんでしたが、“夢幻次元”と“幽玄次元”がキーワードになっています。

 

一方、展示室と展示室の間にあるデッキ部分にも展示物がありました。ここでは、アメリカで4次元の模型をつくるために工夫された構成玩具ゾムツールを使って制作された“正多胞体”や“高次元立方体”の模型が幾つか吊されていました。

 

展覧会の図録はありませんでしたが、展示室やデッキの作品は、写真撮影が許可されていましたのでカメラで撮影することは可能です。ただし、動画撮影は禁止です。研修室には、解説書や構成玩具ゾムツールもありました。

 

展示されている作品を眺めていますと、やがてAIが制作した作品を鑑賞する時代が来るのかもしれない・・・という思いもよぎります。果たして、AIに美を創造する力があるのでしょうか? AI対人間の戦いは、芸術の世界でも近づいてきたようです。

2020年07月26日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー