【感想】2020年度コレクション展Ⅰ「コレクションにみる 拡がる現代アート 眼で聴き、耳で視る」(BBプラザ美術館、2020/6/23~8/28)レビュー

BBプラザ美術館で開催されている、2020年度コレクション展Ⅰ「コレクションにみる 拡がる現代アート 眼で聴き、耳で視る」(会期:2020年6月23日~8月28日)に行ってきました。この展覧会では、BBプラザ美術館が収蔵している現代アートと資料、神戸わたくし美術館が所蔵している堀尾貞治の震災画が出品されていました。

 

「眼で聴き、耳で視る」という展覧会のタイトルは、津高和一(1911-1995)が講演会で使った言葉で、現実的にはできないことだけれども、そうした感覚を総動員して受け止めようとするのが芸術なんだ、という意味合いが込められています。

 

展覧会の構成は特にありませんでしたが、デモクラート美術家協会の泉茂(1922-1995)や山中嘉一(1928-2013)の作品から始まります。デモクラート美術家協会というのは、既成の美術団体や画壇の権威主義を拒否し公募展には出品しないという、自由と独立の精神を重んじた団体で1951年に結成されています。

 

泉茂の作品では《悪の華》や《青天白日》のような色彩的に美しいカラーリトグラフが印象的でした。山中嘉一の《1966,August 28(ダンス)》や《cosmos(print&collage)E》では、楽しげな雰囲気や涼しげな感覚が楽しめました。

 

津高和一の作品では、特に小さな油彩の作品《不詳》が色合いも美しく、心地よい抽象観が味わえました。そして、収蔵後初公開となった不思議な作品も展示されていました。これは、名塩鳥の子紙を使用した作品群で、淡い色彩と抽象性が相まった作品で、和紙の味わいが生かされています。

 

今回の展覧会では、彫刻などの立体作品も展示されていました。個人的には、田中昇氏(1934-)の《山と雨》や《木洩日》といった、純朴で素直な気持ちを思い出させてくれる、童話の世界観を表現した作品が気に入りました。これらの作品では花崗岩や黒御影石が使用されています。

 

後半は、具体美術協会に所属していた、嶋本昭三、上前智祐、白髪一雄、村上三郎、元永定正、前川強、堀尾貞治といった方々の作品が展示されていました。特に、上前智祐(1920-2018)と堀尾貞治(1939-2018)に関しては、展示数も充実していました。

 

他にも、絵本『アネモネ戦争』を出版された上村亮太氏(1959-)の作品が2点展示されていました。展示作品は、絵本の世界とは異なる、黒と白と黄を基調とした抽象作品で風景画のようにも見えます。平和を願う作家の思いが込められた作品のようです。

2020年08月31日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー