【感想】「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」(兵庫県立美術館、2020/7/3~11/8)レビュー

兵庫県立美術館で開催されている「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」(会期:2020年7月3日~11月8日)に行ってきました。この展覧会は、デザイナーの皆川明さん(1967-)が設立されたブランドであるミナ ペルホネンを通して、彼のものづくりへのこだわりや考え方に触れることができる内容になっています。

兵庫県立美術館「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」兵庫県立美術館「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」

 

通常の絵画展と異なり、ファッション系の展覧会ですが、改めてデザイナーたちの幅広い技量や美的感覚を味わえる内容になっていました。この展覧会では、一部の作品を除き写真撮影が可能でしたので、来場者の多くがスマホで撮影されていました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

実 タンバリン
森 洋服の森
芽 テキスタイルのためのデザイン
風 生活とデザイン
根 皆川明の創作
種 アイデアと試み
土 洋服と記憶
空 25 years

 

「実」では、ミナ ペルホネンを代表する刺繍柄「タンバリン」を取り上げ、その制作プロセスが紹介されていました。このタンバリンは、2000-2001年秋冬コレクションで発表されたものです。

 

「森」では、1995年にミナ ペルホネンが設立されてから、2020-2021年秋冬コレクションまでの期間に制作された服が部屋一面に展示されています。鑑賞者は約390体という圧倒的な数の服に取り囲まれることになります。ミナ ペルホネンのコンセプトでもある、シーズンを超えて繰り返し使える服ばかりですので、制作年代も関係なくすべてが調和しています。

 

「芽」では、皆川明さんや田中景子さんなどインハウスのデザイナーが生地のために制作したデザイン画が一堂に展示されていました。自由な発想と遊び心満載の作品群でした。デザイナーならではの魅力溢れる作品で、美術作品として鑑賞することもできます。

 

「風」では、7分29秒の映像作品が上映されており、ここではミナ ペルホネンを着た人々が日常生活を送っている様子が映像に納められています。気取ったところもなく、さりげなく着こなすことができるミナ ペルホネンの魅力が存分に伝わってくる内容になっていました。

 

「根」では、皆川明さんが朝日新聞の「日曜に想う」や日本経済新聞の連載小説「森へ行きましょう」のために描いた挿絵などが展示されていました。デザイナーとして活躍されている皆川明さんですが、もし画家として活動されていたとしてもかなりの成功を収められただろうと思わせられる実力ある作品が楽しめます。

 

「種」では、ファッションブランドとしてのミナ ペルホネンだけでなく、食器や家具など広範囲の分野にまたがる仕事に繋がっている様子が窺える展示空間でした。ここでは、美術や芸術というものを特定の小さな枠組みの中で捉えがちになることへの警告を感じました。

 

「土」では、ミナ ペルホネンの服を使っていた人々から寄せられたメッセージとともに、愛用している服が展示されていました。もはや、ミナ ペルホネンの服が人々の生活の一部になり、貴重な思い出と共に人生に寄り添っていることが感じられる展示内容でした。

 

「空」では、展覧会の総括として、皆川明さんのインタビュー映像とともに、その歴史を振り返ることができるパネルが展示されていました。インタビューでは、皆川明さんの飾らない素直な人柄がそのまま出ていました。すべての出発点は、彼のこうした志から始まっていることがよくわかる映像でした。

 

コロナ禍の影響で大幅に会期が延長となった本展覧会でしたが、鑑賞にはオンライン予約が必要で、当日も平日ながらかなりの人が鑑賞されていました。普段とは異なるジャンルのこうした展覧会に参加するのも、自分の器を広げるためには必要だなと改めて感じました。

2020年11月04日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー