【感想】「女たちのひょうご ― 千姫から緒方八重まで ―」(兵庫県立歴史博物館、2020/10/3~11/23)レビュー

兵庫県立歴史博物館で開催されている「女たちのひょうご ― 千姫から緒方八重まで ―」(会期:2020年10月3日~11月23日)に行ってきました。この展覧会は、江戸時代に生きた兵庫県ゆかりの女性たちに焦点を当て、当時の女性を取り巻く環境や生き方を探った内容になっています。かなり充実した内容で、予想外の学びがありました。

兵庫県立歴史博物館「女たちのひょうご ― 千姫から緒方八重まで ―」

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

プロローグ

第一章 女性へのまなざし
1.「おんな」という性
2.はたらく女たち
3.遊びと楽しみ
4.描かれた美しさ
5.装う女たち

第二章 翻弄される女たち
1.縁と縁のはざまで ~千姫~
2.夫を見送って ~大石りく~

第三章 表現する女たち
1.女が描く女 ~清原雪信~
2.俳諧から仏の道へ ~田ステ女~
3.つどう女たち ~貞閑尼と不徹庵~
4.信仰心をかたちに ~祈る女たち~

第四章 「家」と生きる女たち
1.「家」と「家」をつなぐ
2.女と文字
3.家に眠る女たちの記憶

 

プロローグでは、江戸時代から明治時代に使われていた双六から、当時の女性にとって人生の「ゴール」とは何かについて眺めます。やはり、結婚にまつわるテーマが最重要項目のようです。

 

第一章では、さまざまな資料を通して、江戸時代の女性たちの生き様を眺めていきます。江戸時代につくられた《熊野観心十界図》には、生前子供を産まなかった女性が赴く「不産女(うまずめ)地獄」や、女性の嫉妬から生まれた「両婦(ふため)地獄」、女性の流す血に由来するとされる「血の池地獄」などが描かれており、当時の女性に対する考え方が伺われます。

 

また、女性向けの教訓書《女今川》や《女大学宝箱》なども展示されていました。一方で、年老いた両親に孝行を尽くした女性に対し、藩から米2俵が与えられたという内容の表彰状などもありました。

 

第二章では、歴史に翻弄された女性として、二人の女性に焦点が当てられています。一人は、徳川秀忠と正室・江の長女として生まれ、7歳で豊臣秀頼に嫁いだ千姫です。後期展示では、千姫を描いた《千姫姿絵》も観ることができました。(前期展示は複製を展示)そして、もう一人は、忠臣蔵で知られる大石内蔵助の妻・大石りくです。

 

第三章では、江戸時代の女性絵師・清原雪信と俳諧から仏の道へと進んだ田ステ女が取り上げられていました。ここでは、清原雪信の《麒麟仙女図》や《白衣観音図》など、気品に溢れた作品を鑑賞することができました。一方、田ステ女に関しては、6歳の時に「雪の朝二の字二の字の下駄の跡」という句を詠んだエピソードと共に、その情景を描いた三木翠山の作品が展示されていました。三木翠山は竹内栖鳳に師事した日本画家で、美人画を得意としています。

 

第四章では、「家」と共に生きることを選んだ女性たちの人生が紹介されていました。仮名中心で、雁行様式(行頭をずらして書くこと)が特徴の女筆手本なども展示されていました。また、江戸時代に生きた女性が書いた書状が襖の下張から見つかり、それを復元した書状も展示されていました。

 

他に、緒方洪庵の妻・緒方八重の写真や肖像画も展示されていました。ここでは、三男・四郎の借金問題から息子を罵倒する書状も紹介されていました。良妻賢母として知られる緒方八重の人間味溢れる姿も面白いですね。

 

通常の絵画の展覧会と異なり、展示品の解説などが詳しく、内容も豊富なのでじっくり読んでいるとかなり時間がかかります。興味のある方は受付で図録(1,700円)が販売されていますので、それを利用されると自宅に帰ってから再度楽しむこともできます。作品の紹介から解説まで網羅されていますので、繰り返し鑑賞&学習することができます。

関連商品(PR)

2020年11月20日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー