【感想】「田中一村展 奄美へとつづく道」(美術館「えき」KYOTO、会期:2021/5/12~6/6)レビュー

美術館「えき」KYOTOで開催されている「田中一村展 奄美へとつづく道」(会期:2021年5月12日~6月6日)に行ってきました。この展覧会は、晩年、独特の画風で奄美の風景を描いたことで知られる田中一村(1908-1977)の個展になります。

田中一村展 奄美へとつづく道田中一村展 奄美へとつづく道

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

1章 栃木~東京時代 若き南画家「米邨」の誕生
2章 千葉時代 新しい画風の模索―「一村」の誕生
3章 奄美時代 生物多様性を描く―「南の琳派」の誕生

 

1章では、田中米邨の名で南画に取り組んでいた時代の作品が展示されています。この時代に学んだ南画が後々の一村の画風に大きな影響を及ぼしたことがよくわかる作品群でした。

 

《菊水図》《富貴昌図》《桃果図》といった作品に観られるように、南画と言っても鮮やかな彩色が施されており、晩年に繋がる色彩感覚が垣間見えました。

 

2章では、千葉時代の作品が展示されています。なかなか評価されなかった時代の作品ですが、まさにこの時代があったからこそ晩年の作品に繋がっているように感じました。

 

個性的で、これも田中一村の作品なのかと思わせる作品も多く、見応えがありました。《入り日の浮島》《黄昏》《冬瓜》《秋日村路》《冬景色》など、印象に残る作品も多かったです。個人的には、《放牧》という作品が気に入りました。他にも、《足摺狂濤》や《平潮》を観ていますと、海や波の表現が上手いことに驚かされます。

 

3章は、いよいよ奄美時代の作品が登場します。これぞ田中一村という作品が続きますが、印象的だったのは、岩の上に鳥がすっくと立っている姿を描いた作品が幾つかあったことです。孤独な中にも力強さが感じられ、一村そのものを象徴しているように感じました。

 

当時の一村が住んでいた貸家の写真も紹介されていましたが、一瞬、廃屋?と思ってしまうような外観で、つくづく中身の大切さを思い知らされました。

 

今回は、会期が終わりに近いこともあって、平日ながら入場制限がなされていて、鑑賞待ちの人で列ができていました。約30分待ちという案内がなされていましたが、複製画の販売コーナーなどもあってそれほど時間が掛かったような感覚はありませんでした。一方、会場内では、ゆったり鑑賞することができました。

 

展覧会専用の図録はありませんが、大判の田中一村作品集[増補改訂版] が販売されていました。こちらには、田中一村の作品が228点収載されていますので、ファンの方には納得の作品集となっています。

2021年06月03日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー