【感想】「千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子」(大阪市立美術館、会期:2021/9/4~10/24)レビュー

展覧会の概要

大阪市立美術館で開催されている「千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子」(会期:2021年9月4日~10月24日)に行ってきました。この展覧会は、聖徳太子(574-622)が没して1400年目を迎える記念展となります。

大阪市立美術館「千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子」大阪市立美術館「千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子 日出づる処の天子」

 

展覧会の構成

第1章 聖徳太子の生涯――太子の面影を追って
第2章 聖徳太子信仰の広がり――宗派を越えて崇敬される太子
第3章 大阪・四天王寺の1400年――太子が建立した大寺のあゆみ
第4章 御廟・叡福寺と大阪の聖徳太子信仰――太子が眠る地
第5章 近代以降の聖徳太子のイメージ・・・そして未来へ――つながる祈り

 

感想①「宗教政治家としての姿」

この展覧会を通して強く感じたのは、現代の日本では政治家としてのイメージが強い聖徳太子ですが、当時から現代に至る聖徳太子信仰を見る限り、宗教家としての存在感を見落とせないというところです。

 

宗教的な側面を排除することが現代的で進歩的だと考えている敗戦後の日本人にとっては、奇跡や超人的な行動を示した聖徳太子は否定したかったのかもしれません。しかし、展示された大量の《聖徳太子絵伝》や《聖徳太子像》を見る限り、大衆は聖徳太子をスーパーヒーローとして認識し、その栄光を讃えていたことがよく分かります。

 

当時の日本に異文化である仏教を取り入れた聖徳太子ですが、日本仏教界の各宗派の名だたる僧侶たちが、聖徳太子を自派の信仰の拠り所にしていた様子や、その影響力の大きさがよく分かりました。

 

感想②「威厳ある聖徳太子像」

展覧会の注目ポイントのひとつは、やはり、威厳に満ちた数多くの聖徳太子像が鑑賞できるというところでしょう。何れの太子像も、思慮深く威厳のある凜々しい姿をしていることは注目に値します。

 

さらに、聖徳太子と同一視された救世観音や如意輪観音の像も展示されていました。それらを観ていますと、単なる人物像ではなく、人間を超えた信仰の対象としての聖徳太子の姿が見えてきます。

 

感想③「四天王寺と叡福寺」

この展覧会では、聖徳太子が推古天皇元年に建設した四天王寺が所蔵する作品を中心に、全国にある聖徳太子ゆかりの寺院の作品が一堂に展示されていました。大阪市立美術館の近くにある「和宗総本山四天王寺」が、1400年に亘って太子信仰を連綿と伝えてきた中心寺院であることがよくわかりました。

 

展示室では、四天王寺にまつわる催事や舞楽で用いられた用具など、現代につながる太子信仰の様子がわかる品々も展示されていました。一方、聖徳太子が眠る叡福寺など、大阪の太子ゆかりの寺院に関する資料も観ることができます。まさに聖徳太子の生涯が俯瞰できる内容と言えるでしょう。

 

感想メモ

この展覧会は巡回展で、続いて、東京のサントリー美術館(2021年11月17日~2022年1月10日)でも開催される予定です。他の美術展と比べて、年配の男性が多く来られていたように感じました。図録は、350頁超えの大判で、解説を読みながら展示されていた大量の《聖徳太子絵伝》や《聖徳太子像》等を、自宅でゆっくり振り返ることができる充実した内容になっています。

 

展覧会情報

聖徳太子 日出づる処の天子

会場:大阪市立美術館
会期:2021年9月4日(土)~10月24日(日)
休館日:月曜日(9月20日は開館)
観覧料:1,800円(一般)
音声ガイド:あり(声優:鳥海浩輔)
写真撮影:不可
図録:2,800円(A4変形、370ページ)
Web:特設サイト「聖徳太子 日出づる処の天子」
2021年10月17日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー