【感想】「幻の天才画家 鈴木華邨展 ―甦る花鳥風月の世界―」(逸翁美術館、会期:2021/10/9~12/12)レビュー

展覧会の概要

逸翁美術館で開催されている「幻の天才画家 鈴木華邨展 ―甦る花鳥風月の世界―」(会期:2021年10月9日~12月12日)に行ってきました。この展覧会は、明治から大正にかけて活躍した鈴木華邨(すずきかそん、1860-1919)の花鳥画が堪能できる内容になっています。

逸翁美術館「幻の天才画家 鈴木華邨展 ―甦る花鳥風月の世界―」逸翁美術館「幻の天才画家 鈴木華邨展 ―甦る花鳥風月の世界―」

 

展覧会の構成

第一章 日本画家の大家 鈴木華邨
第二章 本物よりも本物らしく -写実性と叙情性-

 

感想①「《瀑布群猿図》の衝撃」

展覧会場で最初に目にしたのが《瀑布群猿図》でした。この作品は、鈴木華邨が30歳の時に制作した作品ですが、その写実性には驚かされます。瀑布(滝)の表現や、その側に佇む猿の群れの表情や濃淡を用いた遠近法など見事です。特に驚いたのが、木々の葉の繊細な描写です。

 

「本物よりも本物らしく」描くことを追求した鈴木華邨の意気込みが随所の感じられる作品でした。最初から、一気に鈴木華邨の世界に引き込まれてしまいました。

 

感想②「植物の主張が強い」

鈴木華邨の作品には、猿や鳥、猫など様々な動物が写実的に描かれていますが、それと同等に主張が強いのが木々や草花の存在です。鈴木華邨の作品では、良い意味で動物と草花が競い合っています。今回、それが新鮮で印象的でした。

 

例えば、花弁の赤やピンクが鮮やかな《雨中海棠図》では、一羽の鳥が脇役となっています。また、一羽の雲雀と青麦を描いた《雲雀図》では、写実的に描かれた雲雀に対して爽やかな青麦がかなりの存在感を放っており、絶妙なバランスを保っています。

 

鈴木華邨が海外で人気を博した理由のひとつに、この辺りの事情があるのかもしれません。日本的な価値観である“わび・さび”の世界観と比べて、どこか華やかな空気感が作品に漂っていました。

 

感想③「小林一三との関係」

逸翁美術館の「逸翁」は、実業家・小林一三の雅号から取られていますが、この展覧会では、鈴木華邨と小林一三の関係も知ることができました。

 

当時、鈴木華邨、寺崎広業、川合玉堂の3名を後援する鼎会という組織がありましたが、その会員に小林一三も名を連ねていました。展示会場では、小林一三と鈴木華邨との交流を示す当時の手紙も展示されていました。

 

感想メモ

この展覧会用の公式図録も販売されていました。これは、鈴木華邨に関する初の作品集だそうで、一般書店でも入手することができます。

阪急池田駅から歩いて10分程度の場所にある逸翁美術館は、決して大きな美術館というわけではありませんが、ゆったりと楽しむことができました。

 

展覧会情報

幻の天才画家 鈴木華邨展

会場:逸翁美術館
会期:2021年10月9日(土)~12月12日(日)
休館日:毎週月曜日(11/8~11/12は展示替え休館)
観覧料:800円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:「鈴木華邨 花に鳴く鳥、風わたる余白」(東京美術、2,420円)(PR)
Web:逸翁美術館「幻の天才画家 鈴木華邨展」
2021年11月09日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー