【感想】「小磯良平作品選Ⅰ ―小磯芸術の流れ―」(神戸市立小磯記念美術館、2019/5/18~6/30)レビュー

展覧会の概要

2019年5月19日(日)に開催された、神戸市立小磯記念美術館の「マンスリーコンサート ~絵と音の共演~」の終了後、「小磯良平作品選Ⅰ ―小磯芸術の流れ―」を鑑賞してきました。リニューアルオープンに伴って、美術館の受付の位置が変わり、展覧会の動線が西洋美術の展覧会では一般的な右回りに変更されています。

神戸市立小磯記念美術館「小磯良平作品選Ⅰ ―小磯芸術の流れ―」

 

今回の展覧会は、美術館が所蔵している作品を展示したコレクション展になりますが、小磯良平の作品が年代順に展示されながら、同時に関係の深い作家の作品も並べて展示されています。作品展示は以下の流れに沿って展開されています。

 

展覧会の構成

・第二神戸中学校在学期
・東京美術学校在学期
・フランス留学期
・1930年代―帰国後の展開と新制作派協会の創立
・1940年代―戦争の時代と戦後の再出発
・1950~60年代―抽象的表現の時代
・1970~80年代―画業の集大成を迎えて

 

感想①「学生時代からフランス留学」

ひとりの天才画家・小磯良平が環境や時代の変化に合わせて絵画様式を変えつつ、試行錯誤を繰り返しながら完成期に至るプロセスがよく分かる展覧会になっています。

 

学生時代のまっすぐで写実的な作品が、やがてフランス留学期に描かれた「青衣の女」に観られるような、情熱的で鮮烈な色彩が特徴の作品に変化します。写真で観ていた印象よりも遥かに青の色彩が美しく心に迫ってきます。当時の野獣派(フォーヴィスム)の影響を受けているのでしょうか。

 

感想②「パリからの帰国後」

しかし、パリからの帰国後は、一転して小磯良平本来の柔らかいタッチが復活してきます。「横たわる裸婦」を初め魅力的な作品が続きます。1959年の「働く人」では、左側の男性集団と右側の女性集団を結びつけるように中央の女性が男性の腕にしがみついている姿が印象的でした。母と子を描いた作品など、小磯良平の愛情あふれる様子が随所に感じられます。

 

そして、1960年代に入ると抽象的な作品も増え、新しい絵画様式に挑戦する姿が明らかになります。1970年代以降はパステル画も展示され、晩年の小磯良平の魅力が伝わってきました。

 

感想③「牛島憲之と内田巌」

小磯良平以外の作品で特に印象に残ったものとして、牛島憲之「砂丘の建物」、内田巌「白い服の少女」がありました。牛島憲之の「砂丘の建物」には不思議な世界観が描かれており、どこか懐かしい郷愁を感じさせてくれます。また、内田巌の「白い服の少女」では、少女の凛とした雰囲気と可愛い服との奇妙なマッチングになんとも言えない魅力を感じました。

 

2019年06月04日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー