「円山応挙から近代京都画壇へ」(京都国立近代美術館、11/2~12/15)のレビュー&感想

京都国立近代美術館で開催されている「円山応挙から近代京都画壇へ」(会期:2019年11月2日~12月15日)に行ってきました。今回は、前期展示の内容のレビューになります。ちなみに、この展覧会は巡回展で今年の8月~9月にかけて東京藝術大学大学美術館でも開催されていました。

 

江戸時代中期から後期にかけて活躍した円山応挙は、写生を重視した画風が特徴で、その流れを汲む円山・四条派を通して近現代の京都画壇に大きな影響を及ぼしています。今回の展覧会では、円山応挙や四条派の祖となった呉春を始め、円山・四条派の画家たちの作品が一同に会しています。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

すべては応挙にはじまる。
孔雀、虎、犬。命を描く。
美人、仙人。物語を紡ぐ。
山、川、滝。自然を写す。

 

最初に、この展覧会の注目展示となる、兵庫県・大乗寺の襖絵がいきなり現れます。円山応挙《松に孔雀図》、同《郭子儀図》、同《山水図》、円山応瑞《蓮地図》の4つの襖絵は、実際に大乗寺で観る状況と同じように、展示壁に90度の角度を再現して展示されていました。応挙は、この角の部分を上手く利用し、作品に立体感を演出しています。

 

《松に孔雀図》では、垂直に松の枝が張り出している様子、《郭子儀図》では、郭子儀の目線が立体的に子供たちに注がれる様子、《山水図》では、上流からの水の流れを立体的に表現していました。音声ガイドでは、これらの作品解説とともに、大乗寺 山岨眞應副住職によるスペシャル解説も2トラック分収録されていて、作品の背景や曼荼羅としての意味合いがよくわかりました。

 

さらに、応挙の《写生図鑑(乙巻)》で描かれている、土の付いた筍や猿、松などの写生図は、見事な出来栄えで、写生の重要性を力説していた応挙ならではの図鑑になっていて一見の価値があります。

 

「孔雀、虎、犬。命を描く。」の章では、呉春の《海棠孔雀図》が展示されていましたが、文人画の与謝蕪村に学んだだけあって、応挙の写実画に山水画特有のタッチが加味された孔雀が印象的でした。一方、応挙の《狗子図》では、写実的な描き方ではなく、シンプルな線によって可愛い子犬が愛嬌たっぷりに描かれており、応挙の子犬に対する愛情が伝わってきます。他にも、鷲を描いた都路華香(つじ かこう)の《雪中鷲図》や虎を描いた岸駒(がんく)の《松虎図》など、生命感溢れる動物たちが楽しめました。



いちからわかる 円山応挙
京都では今でも「応挙さん」。親しみをこめて「さん」付けで呼ばれる画家は他にはいない。18世紀後半、若冲、蕪村、大雅、蕭白ら名だたるライバルたちを抑え、京でナンバー1の人気を得た円山応挙(1733~95)。(「BOOK」データベースより)

 

「美人、仙人。物語を紡ぐ。」の章では、応挙が描く美人画《遊君図》も観ることができます。また、関羽と張飛を伴った劉備玄徳が諸葛孔明を訪ねる、三国志の有名なシーンを描いた《風雪三顧図》では、応挙、呉春、中島来章(なかじま らいしょう)の3人の作品がそれぞれ並べて展示されており、構図の選び方など三者三様で興味深いものがありました。呉春の作品だけ諸葛孔明も描かれていました。

 

最後の「山、川、滝。自然を写す。」の章では、鵜飼を描いた、応挙や呉春、川合玉堂(かわい ぎょくどう)の作品が並べて展示されていました。さらに、「大正の呉春」とも称された木島櫻谷(このしま おうこく)の《山水画》も展示されていて、幽玄な山水の世界を描いたこの作品は圧倒的な存在感を示していました。

 

そして、前期展示の最後は菊池芳文(きくち ほうぶん)の《小雨ふる吉野》で締めくくられており、近景の桜と遠景の桜が描きこまれた六曲一双の見事な大作でした。近づいて観た時、一瞬、本物の桜の花びらが貼り付けてあるのかと思ってしまいました。展覧会の余韻が楽しめる圧巻の作品でした。

 

日本画の場合、作品の保存の観点から長期に渡る展示が難しい作品も多く、前期と後期では大幅な展示替えがあるので、興味のある方は前期・後期ともに鑑賞されるとより楽しめると思います。前期に続いて後期も音声ガイドを利用される方には、割引券も利用できます。尚、今回の展覧会図録は、通販でも購入できます。今回もそうですが、日本画の展覧会に来られる方は年配の方が多いですね。やはり、人生経験が多ければ多いほど和の心を存分に楽しめるのかもしれません。



円山応挙から近代京都画壇へ
京都。250年前から近代へ、時空を越えた王道の美。円山・四条派の全貌を見渡す永久保存版!(「BOOK」データベースより)
2019年11月08日|カテゴリー:2019年11月投稿, 展覧会