【感想】「琳派展21 没後200年 中村芳中」(細見美術館、2019/10/26~12/22)レビュー

細見美術館で開催されている「琳派展21 没後200年 中村芳中」(会期:2019年10月26日~12月22日)に行ってきました。細見美術館は、細見古香庵(1901~79)に始まる細見家三代の蒐集品を基礎として設立さた美術館で、琳派の作品も多数所蔵しています。今回の展覧会の主役である中村芳中は、大阪で活躍した琳派画家で、細見美術館では2003年、2014年に続き、3回目の中村芳中展となります。

細見美術館「琳派展21 没後200年 中村芳中」

 

展示リストに記載されている作品順と実際に展示されている作品順が大きく異なるので、今回の展覧会構成ではありませんが、芳中の作品の特徴がよく分かるので、参考までに展示リストのタイトルを記載しておきます。

 

芳中の琳派 ―たっぷり、「たらし込み」―
大阪と芳中 ―楽しみながら、おもしろく―
芳中と俳諧 ―ゆるくて、ほのぼの―
版本 ―「かわいい」がいっぱい―

 

「たらし込み」というのは、琳派が得意とした技法で、水分を含んだ筆を用いて墨や色を滲ませる手法です。芳中もこの技法を多用しており、今回の展覧会でも芳中ならではの作品が存分に楽しめました。

 

他にも、芳中が得意とした技法に「指頭画」があります。これは、筆以外のものを使って描く技法で、指に限らず盃や鶏卵を使用したとの記録もあるようです。これらは、人前で描くパフォーマンス的な要素もあったようです。

 

そして、芳中の作品はどこかユーモラスで、思わず笑ってしまう作品が多いことに気が付きます。例えば、《月に萩鹿図》では、月夜に大振りな萩とともに、口を開けて立っている鹿の姿を観ると思わず頬が緩みます。

 

他にも、《光琳画譜》の「波に千鳥」に描かれた千鳥の微笑ましい姿は、思わず笑ってしまします。同じく《光琳画譜》の「仔犬」も、何とも愛くるしい姿で描かれています。芳中という方の大らかな性格が滲み出しているようです。

 

一方、芳中の金地屛風は二作しか確認されていませんが、今回の展覧会では、そのうちの一つとなる《白梅小禽図屛風》が展示されています。「たらし込み」技法も利用した見事な作品で、枝に止まっている小鳥の口はここでも開いています。ちなみに、もう一つの金地屛風作品は、大英博物館に所蔵されている《季草花図屛風》です。

 

芳中の作品を観ていると、毎日忙しく生活している現代人に対して、おおらかにゆったりと生きることの大切さを教えてくれているような気がしました。思わず、「人生もっと楽しんで良いんだよなぁ」と思ってしまいました。

 

細見美術館では、入館時に紙チケットの代わりに、曜日が記載されたロゴ入りの小さなシールを手渡されました。これを目に付くところに貼ってください、ということでした。尚、今回の展覧会用の図録はありませんが、関連図録として、細見美術館の主任学芸員も関わっている『光琳を慕う―中村芳中』が販売されていました。他にも、関連グッズはかなり充実していました。グッズ好きの方は、お金に余裕を持って来られた方が良さそうですね。

2019年12月11日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー