【感想】「中国景徳鎮現代陶磁展 -エンバ景徳鎮陶磁美術コンクールからの軌跡-」(丹波市立植野記念美術館、2020/2/22~4/12)レビュー

丹波市立植野記念美術館で開催されている「中国景徳鎮現代陶磁展 -エンバ景徳鎮陶磁美術コンクールからの軌跡-」(会期:2020年2月22日~4月12日)に行ってきました。新型コロナウィルス感染拡大防止のため臨時休館となっている美術館が多いなか、こちらの美術館は、展覧会のみ開催を続けています。実際問題、ごく一部の人気展覧会を除いて、濃厚接触を心配しなくてはならないような展覧会は少ないように感じますが、公共交通機関を利用するケースまで考慮すると様々な問題があるのかもしれません。

 

今回の展覧会は、当美術館の創設者である植野藤次郎氏が、中国・景徳鎮の陶磁生産のかつての隆盛を願って企画した、主として絵付け作家のコンクールに由来するものです。当時のエンバ景徳鎮陶磁美術コンクールは、平成2年から平成5年にかけて開催されており、既に25年の年月が経っています。この展覧会では、出展作家たちの当時の作品と現在の作品を並べて展示することで、その成果や変遷を眺めることができるようになっています。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

順路1 エンバコンクール出展者たちの過去と現在1
順路2 エンバコンクール出展者たちの過去と現在2
順路3 エンバコンクールの出展者たち 館蔵作品から
順路4 景徳鎮の現代陶磁作家たち / 景徳鎮陶磁板画 館蔵作品から1
順路5 景徳鎮陶磁版画 館蔵作品から2

 

順路1と順路2では、かつてエンバ景徳鎮陶磁美術コンクールに出展した作家たち(張 学文、唐 徳貴、兪 軍、王 淑凝)の当時の作品と現在の作品が並べて展示されていました。全体的に、コンクール当時と比べて作品が大型化し、絵付けのデザインもより洗練された印象があります。唐徳貴氏の作品に関しては、抽象化された素朴なデザインが魅力でしたが、最近の作品にはある種の妖艶さも加わっていました。王淑凝氏の作品では、かつて大皿に描かれていたものが、大きな美しい陶磁板画として昇華していました。

 

順路3では、美術館が所蔵しているコンクール出展者たちの当時の作品が展示されていました。山水画を描いた作品や抽象的な絵柄を描いた作品、魚を描いた作品、中国らしい人物像が描かれた作品など、当時の様子が思い浮かぶようです。

 

順路4と順路5では、景徳鎮で活躍する現代陶磁作家の作品や、美術館が所蔵している陶磁板画が展示されていました。技術的な進歩と相まって、斬新で美しい作品が並んでいました。個人的には、任一心氏によるシンプルな色使いと、ほのぼのとした絵柄や人物像が特徴の陶磁板画が印象に残りました。

 

今回は景徳鎮の現在陶磁作品が中心でしたが、植野記念美術館は一般的な展覧会では意外と目にすることが少ない中国系の作品を観ることができる美術館になっています。

2020年03月16日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー