【感想】「小磯・ポーズ・デッサン」(小磯記念美術館、2020/5/19~7/12)レビュー

神戸市立小磯記念美術館で開催されている、コレクション企画展示「小磯・ポーズ・デッサン」(会期:2020年5月19日~7月12日)を鑑賞しました。

コレクション企画展示「小磯・ポーズ・デッサン」

 

本来この展覧会は、前期展示と後期展示に分かれていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大予防による臨時休館のため会期が大幅に短縮され、前期展示の内容を中心に一部後期展示作品も含めて展示されることになったようです。従って、本来なら会場で出品目録が配布されるところですが、今回はありませんでした。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

1.“的確を極めた物語”
2-1.エルネスト・クレッソン通18番地
2-2.山本通1丁目27番地
3.“まさしくデッサン狂に他ならず”
4.“それでも、彼の手はフォルムを求めていた”
同時開催:《婦人像》受贈記念 小磯良平作品選Ⅰ

 

この展覧会は、小磯良平が愛読していた『ドガ・ダンス・デッサン』(ポール・ヴァレリー/著)を援用しながら小磯良平のデッサンに焦点を当てた内容になっています。解説パネルの冒頭に、「今回は、ポール・ヴァレリーを意識して小説風に解説します」とも書かれていました。

 

「1.“的確を極めた物語”」では、小磯良平の初期の作品が展示されていましたが、大正15年(23歳)に描かれた観音像や菩薩像のデッサンもありました。クリスチャンだった小磯良平にとって珍しい作品ですが、洗礼を受けたのが30歳ですので、当時はまだクリスチャンではありませんでした。

 

「2-1.エルネスト・クレッソン通18番地」では、力強いコンテが展示されていました。そして、「2-2.山本通1丁目27番地」では、山本通に新築したアトリエで制作された作品を中心に展示されていました。《裸婦》《横たわる裸婦》《洋和服の二人》《桃とクルミのある静物》など、見応えのある作品群が鑑賞できます。

 

「3.“まさしくデッサン狂に他ならず”」では、「踊り子」「ノート」「ポーズ」「動物 静物」「肖像」にテーマを分けてデッサン力がよく分かる作品が展示されていました。そして、最後の「4.“それでも、彼の手はフォルムを求めていた”」では、無表情な顔と短髪が印象的な《裸婦》(昭和51頃)や強い意志が画面から漂ってくる《赤いマントの外国夫人》(昭和55年)など、印象的な作品が展示されていました。

 

さらに、今回は同時開催として、八千草薫さんの生前の希望に基づいて遺族から寄贈された、八千草薫さんの肖像画《婦人像》も展示されています。他にも、週刊朝日が開催した第6回表紙コンクールの内容紹介もありました。このコンクールでは、小磯良平が八千草薫を描いた作品が読者投票で1位を獲得しています。ちなみに、上位3位の顔ぶれは以下の通りでした。

 

<週刊朝日 第6回表紙コンクール>
1位 小磯良平(八千草薫):605,192票
2位 岩田専太郎(北原三枝):360,217票
3位 高野二三男(京マチ子):220,094票

 

こうしてみますと、小磯良平が圧倒的な得票数で1位を獲得していることが分かります。様々な画家が描いた表紙も並べて展示されていましたが、もし自分が投票するなら、やはり小磯良平が描いた表紙に1票を入れるだろうと思える出来映えでした。

 

久しぶりの展覧会鑑賞となりましたが、やはり、良いものですね。まだまだ遠くの美術館に遠征して鑑賞することは難しい状況ですが、気分転換にお近くの美術館に行かれてはいかがでしょうか?

2020年05月29日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー