【感想】「水彩画家 生誕120年 別車博資展」(神戸ゆかりの美術館、2020/5/19~6/28)レビュー

神戸ゆかりの美術館で開催されている「水彩画家 生誕120年 別車博資展」(会期:2020年5月19日~6月28日)に行ってきました。この展覧会は、現在の神戸市兵庫区出身の水彩画家・別車博資(べっしゃ ひろすけ、1900~76)の作品を中心に、彼とゆかりのある画家の作品も展示されていました。

 

この展覧会の本来の会期は2020年4月11日からの予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大予防のための臨時休館により、実質的に後期展示期間のみの開催となっています。ただし、私が鑑賞したときは前期展示向けの作品が展示されていました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 水彩の神戸モダニズム
第2章 播州への誘い
第3章 ヨーロッパへの旅
第4章 海、山、光を描く
第5章 ゆかりの人々

 

第1章では、一見すると油彩画にも見える別車博資特有のモダンな水彩画が並んでいました。例えば、《旧栄町風景》では、上空から俯瞰した町並みのなかに、オシャレなシルエットの人々が描かれており、実に心地よい作品に仕上がっています。ここでは、油彩画の作品《神戸・造船所風景》も展示されていました。

 

第2章では、別車博資が、神戸だけでなく播州地方を中心に兵庫県内を訪れて写生した作品が展示されていました。ここでは、《竹林のほとり》、《雪晴れ風景》、《彩雲》、《秋の鶴林寺》、《須磨彩雲》といった作品が印象に残りました。意外にも、水彩画特有の明るい色彩の作品より、少し暗めの作品に魅力を感じました。

 

第3章では、別車博資がヨーロッパ旅行の際に描いた作品が展示されていました。《ウェギス村(スイス)》や《セーヌ川に釣る》など、当時のヨーロッパの雰囲気が伝わる作品が並んでいました。

 

そして、第4章では、章タイトルのとおり、海や山、光を描いた作品や絶筆となった作品《竹林のある村の風景》が展示されていました。《センダンの並木道》や《錦秋の箱根》、《嵐山風景》など、水彩画の魅力が存分に発揮された作品を鑑賞することができます。

 

第5章は、別車博資にゆかりのある画家(小松益喜、神原浩、川西英、青木一夫、上尾忠生、田中徳喜)の作品が展示されていました。田中徳喜のコーナーで、別車博資のコメントが紹介されていましたが、なるほどと思わせられる内容でした。

 

「中学校で上手な子は、うち(兵工高)にきたら伸びませんで。スタイルができていて、それをこわすのがこわいんですな。その点、田中(徳喜)君なんか・・・」

 

この展覧会では、図録(1,700円)も販売されていますので、興味を持たれた方は購入されると良いでしょう。手に取って見やすい構成になっています。

2020年05月31日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー