【感想】「大観と春草 ー東京画壇上洛ー」(福田美術館、2020/8/1~10/11)レビュー

福田美術館で開催されている「大観と春草 ー東京画壇上洛ー」(会期:2020年8月1日~10月11日)に行ってきました。今回は、かねてより行ってみたかった、2019年に開館した京都・嵐山にある福田美術館での展覧会です。久しぶりの嵐山でしたが、福田美術館は桂川のほとりにあり、渡月橋にも近く存分に癒やされました。

桂川 渡月橋福田美術館大観と春草 ー東京画壇上洛ー

 

この展覧会では、大観と春草という仲の良い二人の巨匠の作品を中心に、下村観山や木村武山といった東京画壇の画家たちの作品も展示されていました。

 

覧会の構成は以下のとおりです。

 

第1章 大観と春草
第2章 東京画壇上洛
第3章 表現と画材

 

第1章では、近代日本画の確立を目指して挑戦する横山大観と菱田春草に対して、世間は朦朧体と揶揄するなど、二人が果敢に戦っている様子が作品を通しても伝わってきました。次第に眼が見えなくなっていく菱田春草の様子は、その制作年との対比でその状況を感じることができます。

 

性格的には、静の菱田春草と動の横山大観とも言える二人ですが、菱田春草の《波濤図》と横山大観の《竹林図》では、互いの題材を交換したかのような試みが見えて興味深いですね。シンプルな題材を選びながらも、奥深い心情や風情が伝わってくる二人の作品群からは、彼らが巨匠と呼ばれる理由がよくわかります。

 

第2章では、大観や春草と同じく東京で活躍していた橋本雅邦や下村観山、木村武山、小林古径、前田青邨たちの作品も堪能できます。同じように富士を描いても、横山大観と橋本雅邦、下村観山では、随分印象が異なることが分かります。解説も分かりやすく勉強になりました。

 

展示会場に「展示作品人物相関図」が掲示されていましたが、これを観ていますと、横山大観の人の好き嫌いがはっきりしているところが、何とも面白いですね。

 

第3章では、表現と画材から当時の画家たちの挑戦を読み解こうとする試みがなされています。朦朧体に挑んだ大観を始め、堅山南風や前田青邨、小林古径、速水御舟、安田靫彦、小杉放庵、西郷孤月たちが新たな絵画技法に挑戦している様子が窺えます。と言っても、解説を読んで始めて理解できる部分が数多くありました。近代日本画の確立を目指して挑戦していた当時の画家たちの奮闘ぶりがよくわかります。

 

展示の最後には、日本画の画材となる、筆や刷毛、伝統画材、原石、基底材、膠(にかわ)、岩絵の具が、解説と共に並べて展示されていました。珍しい試みですね。

 

福田美術館では、一部の作品を除いて写真撮影が可能で、音声ガイドもスマートフォンを通して無料で利用できますので、展覧会場だけでなく、自宅に帰ってからも展覧会を再度楽しむことができます。開かれた新しいタイプの美術館を目指しているようです。尚、この展覧会の図録はありませんでした。

2020年10月05日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー