【感想】「奇才 ―江戸絵画の冒険者たち―」(あべのハルカス美術館、2020/9/12~11/8)レビュー

あべのハルカス美術館で開催されている「奇才 ―江戸絵画の冒険者たち―」(会期:2020年9月12日~11月8日)に行ってきました。この展覧会は巡回展で、これまで江戸東京博物館(2020年6月2日~6月21日)、山口県立美術館(2020年7月7日~8月30日)と巡回し、今回、あべのハルカス美術館にやってきました。

 

この展覧会は、そのタイトルどおり、江戸時代に活躍した「奇才」たち35名が登場します。「奇才」というのは、江戸絵画のなかで異端と呼ばれ、個性的で斬新な仕事をした絵師たちということになります。

 

展覧会の構成は絵師ごとにパネル解説と展示がなされていて、あたかも「奇才」の教科書と言った内容の展覧会でした。さらに、前期展示(9/12~10/11)と後期展示(10/13~11/8)では、大幅に展示内容が入れ替わりますので、全容をつかむには前後期共に鑑賞する必要がありそうです。今回のレビューは前期展示の内容になります。

 

展覧会の構成と登場絵師は以下のとおりです。

 

<京>
俵屋宗達、尾形光琳、狩野山雪、伊藤若冲、円山応挙、長澤蘆雪、曾我蕭白、池大雅、与謝蕪村、祇園井特、狩野永岳

<大阪>
中村芳中、耳鳥斎、林閬苑、墨江武禅

<江戸>
葛飾北斎、加藤信清、谷文晁、鈴木其一、狩野(逸見)一信、歌川国芳

<諸国>
蠣崎波響、菅井梅関、林十江、河鍋暁斎、佐竹蓬平、髙井鴻山、白隠、田中訥言、岩佐又兵衛、浦上玉堂、絵金、仙厓、片山楊谷、神田等謙

 

<京>では、狩野山雪の《龍虎図屏風》がもう普通ではありませんでした。そこには、礼儀正しい虎と弱々しい龍が描かれています。また、重要文化財に指定されている《寒山拾得図》の異様さは際立っていました。さらに、伊藤若冲の《鶏図押絵貼屏風》は、遊び心も含んだ表現力

で流石としか言い様がありません。

 

重要文化財に指定されている曾我蕭白の《群仙図屏風》では、怪しげな仙人の世界が色鮮やかに展開していました。マンガを思わせる表現でもあります。また、祇園井特の《公卿と官女図屏風》も、どこかなまめかしくて怪しげでした。

 

<大阪>では、丸っこいフォルムとたらし込みで知られる中村芳中や、日常の愉快な雰囲気が描かれた耳鳥斎の作品からは、大阪らしい庶民的な画風を楽しめました。一方、墨江武禅の《月下山水図》や《寒林山水図》は、普通の山水画ではなく、幻想的な雰囲気がある見事な作品でした。

 

葛飾北斎の作品はこの展覧会の冒頭で、《東町祭屋台天井絵 龍図》と《上町祭屋台天井絵 男浪》が展示されていましたが、<江戸>のコーナーでも少し展示されていました。《千鳥の玉川》や《南瓜花群虫図》などを見た瞬間、思わず流石…という言葉が出てしまいました。

 

加藤信清の作品は一見すると普通の仏画に見えますが、よくよく見ますと、それらが経文の文字で描かれていることがわかります。まあ普通ではないですね。鈴木其一の《紅葉狩図凧》や《達磨図凧》は、その名のとおりの和凧ですが、意表を突く表情です。しかし、子どもたちが喜んだかどうかはわかりません。

 

狩野(逸見)一信は、《五百羅漢図》シリーズの作品が幾つか展示されていましたが、一見してもう怪しい雰囲気が満載です。歌川国芳の作品では、《水を呑む大蛇》や《合戦図》が展示されていましたが、見事な技量で不思議な世界観や遊び心を描いていました。

 

そして、最後の<諸国>コーナーでは、普段あまり目にすることのない貴重な作品群が楽しめました。アイヌの有力者を描いた蠣崎波響の作品や巨大なトンボを描いた林十江の作品、河鍋暁斎が処刑場の残酷なシーンを描いた羽織、妖怪を描いた髙井鴻山の作品など、見事な奇才ぶりが発揮されていました。

 

さらに、絵金の作品は、予想以上に色彩が豊かでグロテスクな表現が印象的でした。そして、片山楊谷の《竹虎図屏風》や神田等謙の《西湖・金山寺図屏風》など、優れた才能を持った絵師たちがまだまだ存在することもわかりました。

 

今回は前期展示を鑑賞しましたが、図録には前期&後期展示分が掲載されていますので、かなりのボリュームとなっています。大型かつ400頁超えの図録ですので、2,700円という価格も安いと言えるかも知れません。ただ、重さを量ると1.5Kg強ありましたので、購入予定の方は大きめのカバンかリュックなどを用意されたほうが良いかもしれません。

2020年10月10日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー