【感想】「みんなのまち 大阪の肖像[第1期]」(大阪中之島美術館、会期:[第1期]2022/4/9~7/3)レビュー

展覧会の概要

大阪中之島美術館で開催されている「みんなのまち 大阪の肖像[第1期]」(会期:[第1期]2022年4月9日~7月3日)に行ってきました。この展覧会は、大阪中之島美術館の開館記念展として、まさに「大阪」をテーマとした展覧会になっています。美術館が所蔵する絵画、写真、ポスター以外に、大阪府市内外の博物館や美術館、企業などからも出品されています。

大阪中之島美術館「みんなのまち 大阪の肖像[第1期]」

 

展覧会の構成

第1章 おおさか時空散歩-中之島からはじめよう
第2章 胎動するランドスケープ
第3章 パブリックという力場
第4章 商都のモダニズム
第5章 たなびく戦雲

 

感想①「水の都市」

この展覧会は、第1期(4/9-7/3)と第2期(8/6-10/2)に分かれていますが、第1期のテーマは「都市」への道標。明治・大正・昭和戦前、となっています。

 

最初は、“水都”としての大阪を描いた作品が多数展示されていました。昔の大阪は、川や堀、橋、舟といった水都のイメージが強かったんですね。今では既に埋め立てられてしまったものも多いようですが、在りし日の大阪の姿がここにありました。

小出楢重《街景》

(小出楢重《街景》)

 

感想②「日本初のヌードポスター」

ポスター関連も多数展示されていて、北野恒富が手がけた作品が予想以上に多くて驚きました。女性たちの心情を描いた妖艶な絵画作品を得意とした北野恒富ですが、ここではそれとは異なる仕事人の姿を見ることができました。

 

そして注目のポスターは、片岡敏郎《赤玉ポートワイン》です。チラシなどでたまに見かけるポスターでしたが、今回、実物を観て「なるほど」と思わせる魅力がありました。

 

これは、日本初のヌードポスターということでも注目されたようですが、日本的な童顔女性の色気と初心さが混在する作品ですね。胸から下が黒くぼかされていて、見えそうで見えない絶妙さも見事です。ちなみに、このポスターは、ドイツの世界ポスター展で1位を受賞しているそうです。

 

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※「ポートワイン」は、もともとポルトガルのポルト港から出荷されたワインに付けられていた名称で、ポルトガル政府と商標権などをめぐって、赤玉ポートワインは「赤玉スイートワイン」に名称変更されました。

 

感想③「吉原治良」

最後のセクションで、吉原治良が戦中・戦後に描いた作品が数点展示されていました。吉原治良といえば、具体美術協会を結成し、抽象絵画や○を描いた作品などが印象深いですが、ここでは、戦中・戦後の心の動揺が感じられる作品を観ることができました。

 

日本全体が、戦争を通して様々な苦悩や挫折を味わっていましたが、画家たちの作品にもそれらの影響は色濃く出ています。しかし、そんなときに思い出すのが、横山大観の《或る日の太平洋》という作品です。

 

それは、荒れ狂った太平洋を描いた作品ですが、その奥には富士山が悠然とそびえています。これこそが日本人の誇りでしょう。敗戦で終わったとしても、決して失ってはいけない日本人の大和魂が富士山に象徴されているように思います。

 

感想メモ

特別展「モディリアーニ」と比べると鑑賞者が圧倒的に少なかったですが、それでも、この美術館にとっては欠かせない開館記念展と言えるでしょう。美術館構想の発表から約40年、そして準備室の設置から約30年という歳月を経て、ついに大阪の地に開館した大阪中之島美術館の心意気を感じる内容でした。

前田藤四郎《空中曲技》

(前田藤四郎《空中曲技》)

 

展覧会情報

みんなのまち 大阪の肖像[第1期]

会場:大阪中之島美術館
会期:2022年4月9日(土)~7月3日(日)
休館日:月曜日休館(5/2を除く)
観覧料:1,200円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:一部可能
図録:なし
Web:大阪中之島美術館「みんなのまち 大阪の肖像」
2022年05月23日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー