【感想】「ポンペイ展」(京都市京セラ美術館、会期:2022/4/21~7/3)レビュー

展覧会の概要

京都市京セラ美術館で開催されている「ポンペイ展」(会期:2022年4月21日~7月3日)に行ってきました。この展覧会では、ナポリ国立考古学博物館が収蔵する古代都市ポンペイの遺物が展示されています。

 

古代都市ポンペイは、西暦79年にイタリアのヴェスヴィオ山の大噴火によって埋没してしまった町で、この展覧会を通して当時の人々の生活を推察できる内容になっています。

京都市京セラ美術館「ポンペイ展」京都市京セラ美術館「ポンペイ展」

 

展覧会の構成

序章 ヴェスヴィオ山噴火とポンペイ埋没
1 ポンペイの街 ――公共建築と宗教
2 ポンペイの社会と人々の活躍
3 人々の暮らし ――食と仕事
4 ポンペイ 繁栄の歴史
5 発掘のいま、むかし

 

感想①「女性犠牲者の石膏像」

展示室に入りますと、うつ伏せに横たわった女性像が置かれていました。この石膏像の意味が理解できると、これがヴェスヴィオ山の大噴火によって生じた現実だと思い知らされます。

 

噴火物の堆積層を調査していると、しばしば空洞が見つかると言います。その空洞は、火山灰などに埋まった有機物がその後に分解してできたものだそうです。有機物には家具などの木製品もありますが、その中には人間の遺体も含まれます。

 

そうしてできた空洞に石膏を流し込み、型をとることでその空洞の正体がわかります。こうして出現した若い女性の石膏像が、ここで展示されている《女性犠牲者の石膏像》の正体でした。

《女性犠牲者の石膏像》ポンペイ出土

(《女性犠牲者の石膏像》ポンペイ出土)

 

感想②「フレスコ画」

この展覧会では、数々のフレスコ画が展示されていました。ヴェスヴィオ山が描き込まれた《バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山》、フォルムの人々の日常を描いた《フォルムの日常風景》、裸体女性を描いた《三美神》、《ウェヌス》など、芸術的にも見応えのある作品でした。

《三美神》ポンペイ出土

(《三美神》ポンペイ出土)

 

他にも、イシス神殿で発見された宗教的な作品や、動物を描いた作品、ホメロスの叙事詩を描いた作品など、様々なジャンルのフレスコ画がありました。変わったところではは、キューピッドたちが仕事をする様子を描いた《職人仕事をするクピトたち》という連作もありましたね。

 

感想③「モザイク」

この展覧会の特徴的な作品として、一群のモザイク作品がありました。着色された小さな断片を組み合わせて制作されたモザイクは、実に見事です。

《哲学者たち》ポンペイ出土

(《哲学者たち》ポンペイ出土)

 

肖像画さえもモザイクで制作され、床にはめ込まれていたようです。通称メメント・モリ(死を忘れるな)と呼ばれるテーブル天板には、死を象徴するドクロが中央に大きく描かれていました。

 

“猛犬注意”の銘と共に猛犬が描かれたモザイクは、現在に生きる私たちと余り変わらない生活を送っていたことが分かりますね。こうしたモザイクは床に埋め込まれていることが一般的ですので、芸術的にはより豊かな生活を送っていたようにも思えます。

 

感想メモ

当日は、会期半ばの平日だったこともあり、事前予約をせずに鑑賞できました。この展覧会では写真撮影が可能でしたので、多くの方が思い思いに撮影されていました。その分、図録(2,900円)の売れ行きは若干悪くなっているかもしれません。

 

ただ、図録の内容はかなり充実していて、購入されても損はしないと思います。私は時間を掛けて鑑賞したつもりでしたが、図録を見ていると「見逃していたなぁ」と思うこともありました。博物館系の展覧会では、小型の展示品もあり、それらの拡大写真を見られたり、展示品の詳細な解説を後からじっくり読めたりできるのも図録の良いところですね。

 

この展覧会は巡回展で、これまでに、東京国立博物館(2022/01/14~04/03)、京都市京セラ美術館(2022/04/21~07/03)にて開催されてきましたが、この後、宮城県美術館(2022/07/16~09/25)、九州国立博物館(2022/10/12~12/04)でも開催される予定です。

 

展覧会情報

ポンペイ展

会場:京都市京セラ美術館
会期:2022年4月21日(木)~7月3日(日)
休館日:月曜日 ただし、祝日の場合は開館。5月2日(月)は開館
観覧料:2,000円(一般)
音声ガイド:600円(声優:小野賢章・小野友樹)
写真撮影:可能
図録:2,900円
Web:京都市京セラ美術館「ポンペイ展」
公式サイト:特別展「ポンペイ展」
2022年06月24日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー