【感想】「没後50年 鏑木清方展」(京都国立近代美術館、会期:2022/5/27~7/10)レビュー

展覧会の概要

京都国立近代美術館で開催されている「没後50年 鏑木清方展」(会期:2022年5月27日~7月10日)に行ってきました。この展覧会は、美人画で有名な鏑木清方(1878-1972)の没後50年を記念した回顧展となります。

京都国立近代美術館「没後50年 鏑木清方展」京都国立近代美術館「没後50年 鏑木清方展」

 

展覧会の構成

1章 木挽町紫陽花舎・東京下町にて(明治)
2章 本郷龍岡町・金沢游心庵にて(大正)
3章 牛込矢来町夜蕾亭にて(昭和戦前)
4章 鎌倉、終の棲家にて(昭和戦後)

 

感想①「生活を描く」

美人画で有名な鏑木清方ですが、展示されている作品を観ていると、人々の日常や生活に関心があったことが、ひしひしと伝わってきます。

 

美人画にしても、単に美しい女性を描いているというより、女性の心を描いていることがよく分かります。挿絵画家として活躍していたことも影響していると思われますが、情感溢れる作風が印象的でした。

 

清方は風景画も描いていますが、そのなかに人物が描かれているだけで、その作品に命が吹き込まれているように感じます。それに対して、純粋に風景を描いただけの作品には、どこか物足りない気がしてしまいました。

 

感想②「《築地明石町》三部作」

この展覧会の注目は、何と言っても、長らく所在不明となっていた代表作《築地明石町》と、その左右幅として制作された《新富町》と《浜町河岸》の三部作が揃って鑑賞できるという点でしょう。

 

この作品を通して、明治期の情景を描くことを避け、江戸期の風俗を描いていた清方が、思い出深い明治期の明石町を描くことになり、大きな転機になったと言われています。

 

この三部作では、大きく描かれた女性の背景に、記憶の中に浮かぶような背景がおぼろげに描かれています。その加減がまた見事な心象風景となって、心地好い演出効果に繋がっていますね。

 

感想③「会場芸術と卓上芸術」

庶民の生活に親しみを持っていた清方らしく、展覧会場で仰々しく鑑賞する大型の作品だけでなく、日常的に鑑賞できるような小型の卓上芸術にも取り組んでいたところも注目点ですね。

 

若い頃に挿絵画家として研鑽を積んだ清方が、晩年に「卓上芸術」と称して、挿絵や画帳、絵巻のような手元で楽しめる作品制作に戻っていくところが印象的でした。

 

感想メモ

意外なことに、京都で鏑木清方の大規模な回顧展を開催するのは45年ぶりとなるそうです。そう考えると、一生の間に数回しかないチャンスでもあると言えるのかもしれませんね。

 

そうした意味では、図録もまた貴重なのかもしれません。日本画特有の期間限定の展示のため、鑑賞できなかった作品だけでなく、既に会期を終えた東京会場限定で展示されていた作品も収載されています。

 

美術展情報

没後50年 鏑木清方展

会場:京都国立近代美術館
会期:2022年5月27日(金)~7月10日(日)
休館日:月曜日
観覧料:1,800円(一般)
音声ガイド:600円(歌舞伎俳優:尾上松也)
写真撮影:不可
図録:2,800円
Web:京都国立近代美術館「没後50年 鏑木清方展」
公式サイト:特別展「没後50年 鏑木清方展」
2022年06月28日|ブログのカテゴリー:2022年投稿, 展覧会レビュー