【感想】「画家『呉春』―池田で復活(リボーン)!」(逸翁美術館、2019/9/14~12/8)レビュー

逸翁美術館で開催されている「2019展示Ⅳ 池田市制施行80周年記念 画家『呉春』―池田で復活(リボーン)!」(会期:2019年9月14日~12月8日)に行ってきました。逸翁美術館は、阪急電車や宝塚歌劇団、阪急百貨店、東宝などを創業した実業家・小林一三(雅号:逸翁)が収集した美術品を所蔵・展示している美術館です。今回は、池田市とも縁が深い呉春の展覧会になります。

逸翁美術館「2019展示Ⅳ 池田市制施行80周年記念 画家『呉春』―池田で復活(リボーン)!」

 

与謝蕪村に師事していた彼は、松村月渓と名乗り、蕪村から俳諧や南画を学びます。しかしある年、妻と父を相次いで亡くし落ち込んだ松村月渓は、蕪村の勧めもあって池田に移り住むことになります。池田の人々に温かく迎えられた月渓は、「呉服の里」と呼ばれた池田で新年を迎えたことを喜び、呉春と改名します。その後、京都に戻った呉春は、円山応挙と親交を結び、やがて四条派の祖となります。今回の展覧会は、こうした池田で復活を遂げた呉春を特集した展覧会です。

 

特に、章立てのような展覧会の構成はありませんでした。私は、後期の展示作品を鑑賞しましたが、展示目録を見ると前期と後期では、大部分の作品が展示替えとなっていたようです。

 

与謝蕪村の南画と円山応挙の写実画の両方を取り込んだ呉春ならではの作風で、見応えのある作品が並んでいました。例えば、呉春の《雪中老松図》は、応挙の《雪松図》のような写実的な松ではありませんが、より大胆なタッチで描かれている様子が魅力的でした。また、笑っている猪を描いた《猪図》や昼寝をする李白を描いた《李白午睡図》などは、呉春のおおらかな性格が感じられ、楽しい作品になっています。

 

ほかにも、応挙が雷神を書き足したとされる、円山応挙・呉春合作《蕉葉雷神図》やカラスの群れが印象的な《寒林落日図》など、心に残る作品を多数観ることができました。そして、やはり圧巻は、重要文化財にも指定されている六曲一双の《白梅図屏風》でした。背景の薄い青色と白梅の織りなす風情がなんとも魅力的な作品です。

 

できれば、前期の作品も鑑賞したかったというのが正直なところですが、次の機会を待ちたいと思います。先日行った京都国立近代美術館で開催されている「円山応挙から近代京都画壇へ」でも、呉春の作品が展示されていましたが、今回の展覧会は、より一層、呉春の魅力が伝わる内容になっていました。

2019年11月16日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー