「海を越えた憧れ -印象派から日本の近代洋画へ- ひろしま美術館名品展」(植野記念美術館、11/3~12/22)の感想&レビュー

植野記念美術館で開催されている「海を越えた憧れ -印象派から日本の近代洋画へ- ひろしま美術館名品展」(会期:2019年11月3日~12月22日)に行ってきました。この展覧会は、植野記念美術館の開館25周年を記念した企画で、ひろしま美術館の貴重な所蔵名品が鑑賞できる機会となりました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

順路1 ロマン派から印象派・新印象派へ
順路2 フォービスム・キュビスムからエコール・ド・パリ
順路3 エコール・ド・パリからその先へ
順路4 日本の近代洋画のあゆみ
順路5 シアタールーム

 

順路1では、ドラクロワから始まり、クールベ、コロー、ミレー、ブーダン、ドガ、マネ、ルノワール、モネ、ゴーギャン、シニャック、ムンク、シダネルと、超一流画家の作品が並びます。今回の展示作品の中で特に印象に残ったのが、ミレー《羊の毛刈り》、ルノワール《麦わら帽子の女》、《パリスの審判》、ゴーギャン《ボア・ダムールの水車小屋の水浴》、シダネル《ジェルブロワ、胸像》でした。

 

ミレー《羊の毛刈り》は、毛を刈り取られた羊と、まだ刈り取られていない羊が混在するなかで、羊たちが示す素朴な心情までも描ききった力作です。ルノワール《麦わら帽子の女》は、ひろしま美術館の記念すべきコレクション第1号の作品で、ルノワールの魅力溢れる作品でした。また、展覧会チラシにも大きく掲載されている《パリスの審判》は、豊満な女神たちが登場するルノワールらしさが満載の作品でした。

 

ゴーギャン《ボア・ダムールの水車小屋の水浴》は、まだ印象派の影響が強く残っている画風で、自然の中で水浴する少年たちを描いた何とも言えない魅力を持った作品でした。シダネル《ジェルブロワ、胸像》は、人物を描いていないにもかかわらず、人の温かみを感じさせる魅力的な作品で、今後、シダネルにも注目したいと思いました。



イラストで読む 印象派の画家たち
「怖い絵」の中野京子氏絶讃! “ユーモア・センス、エピソード選択の的確さ、何より絵の巧さ! とっても楽しい印象派の本です"

 

順路2では、印象派のあとに続く、フォービスムやキュビスム、エコール・ド・パリの作品が展示されていました。この中では、フォービスムのヴラマンクの作品が特に印象に残りました。《木のある風景》では、激しいタッチと色使いが何とも感動的な情景を生み出していました。ルオーも私の好きな画家ですが、今回は《ピエロ》という作品が展示されていました。

 

順路3では、エコール・ド・パリからその先へ、ということで、ユトリロやレオナール・フジタ(藤田嗣治)、ビュッフェ、シャガールの作品が展示されていました。ユトリロは、白の時代の明るい作品《モンモラシーの通り》が展示されていました。藤田嗣治の作品は、彼の代名詞とも言えるパールホワイトが特徴の《裸婦と猫》と、それとは対照的で宗教的な建物画《アッシージ》が展示されており、画風の幅広さを感じました。

 

順路4では、日本の近代洋画の流れが俯瞰できる作品が展示されていました。黒田清輝の《白き着物を着せる西洋婦人》は、黒田清輝らしい見事な出来栄えです。藤島武二の《日の出》は、5年のスケッチ旅行を経て完成された感動的な風景画で、日本的な情感あふれる日の出を描いています。他にも、坂本繁二郎の《巴里近郊ヴィラ・グルネー》、金山平三の《筑摩川》、小出楢重の《地球儀のある生物》、梅原龍三郎の《裸婦》、海老原喜之助の《群鳥》など、日本人ならではの西洋画が目白押しでした。

 

最後の順路5は、シアタールームになっていて、ひろしま美術館の紹介ビデオが上映されていました。全編で45分程度あったのではないかと思いますが、ひろしま美術館のコレクション展示室1~6に展示されている代表的な作品を、わかりやすい解説とともに紹介していました。

 

ショップコーナーでは、ひろしま美術館の3種類の所蔵品図録《西洋》《日本洋画》《日本画》や書店で流通している『ひろしま美術館コレクション フランス美術風景紀行』(ひろしま美術館/著)が販売されており、他に作品の解説パンフレットなどもありました。こうしてみると、ひろしま美術館では、1級品のコレクションを持っているだけでなく、紹介ビデオや所蔵図録、PR書籍の発売など、広報活動もしっかり行っている様子が伺えます。こうしたところは、他の美術館にとっても参考になるのではないでしょうか。



ひろしま美術館コレクション フランス美術風景紀行
印象派の名品とともに今も残る景色を旅する。モネ、ルノワール、ゴッホ、マネ…。別名「印象派美術館」と呼ばれるひろしま美術館のコレクション約100点を風景写真とともに紹介。阿川佐和子さんのインタビュー収録!(「BOOK」データベースより)

 

地方の美術館では、なかなか開催することができない印象派の展覧会なので、こうした機会を見逃さず、お近くの方にはぜひとも鑑賞してい欲しいと思った展覧会でした。

2019年11月19日|カテゴリー:2019年11月投稿, 展覧会