「ラファエル前派の軌跡展」(あべのハルカス美術館、2019/10/5~12/15)のレビュー&感想

あべのハルカス美術館で開催されている「ラファエル前派の軌跡展」(会期:2019年10月5日~12月15日)に行ってきました。この展覧会は巡回展で、三菱一号館美術館(2019年3月14日~6月9日)、久留米市美術館(2019年6月20日~9月8日)に続き、今回のあべのハルカス美術館会場が最終でした。

 

ラファエル前派というのは、イギリスのロイヤル・アカデミー付属美術学校に通っていた、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの3人が中心となって、ラファエロ以前の美術に回帰することを目指して1848年に結成した美術同盟です。

 

これは、当時の美術学校が盛期ルネサンスを代表するラファエロ・サンティを絶対視していたため、これに対する反発がきっかけになっています。ラファエル前派同盟は、批評家のウィリアム・マイケル・ロセッティとフレデリック・ジョージ・スティーヴンス、画家のジェームズ・コリンスン、彫刻家のトーマス・ウルナーを含めて7名でスタートします。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 ラスキンとターナー
第2章 ラファエル前派
第3章 ラファエル前派周縁
第4章 バーン=ジョーンズ
第5章 ウィリアム・モリスと装飾芸術

 

第1章では、ラファエル前派に思想的に大きな影響を与えた、素描家でもあった美術評論家ジョン・ラスキンと彼が擁護した画家ジョゼフ・マラード・ウィリアム・ターナーの作品が展示されています。ターナーの風景画からスタートするこの展覧会は、一気に盛り上がり、続くラスキンの素描もなかなか見事です。「自然をありのままに再現すべきだ」と主張したラスキンらしい作品が並びます。

 

第2章では、ラファエル前派の主要メンバーの作品を中心に、その全貌が明らかになっています。まさに、“これがラファエル前派”という作品が並んでいました。ラスキンの妻エフィに対するミレイの恋心が伺える《滝》や、アレクサ・ワイルディングやジェイン・モリスなど、無表情で冷淡な雰囲気をもつ女性モデルを好んだロセッティの作品が印象的でした。

 

第3章では、緻密な描写が美しいウィリアム・ヘンリー・ハントの《ヨーロッパカヤクグリ(イワヒバリ属)の巣》や《果実―スピノサスモモとプラム》、不思議な感覚に襲われるウィリアム・ダイスの《初めて彩色を試みる少年ティツィアーノ》や《アラン島の風景》、何とも愛らしいフレデリック・レイトンの《母と子(サクランボ)》、ギリシャ神話を描いたジョージ・フレデリック・ワッツの《エンディミオン》など、ラファエル前派周辺の画家たちが描いた見応えのある魅力的な作品が目白押しでした。

 

第4章では、ラファエル前派と密接な関係のあった人気画家エドワード・バーン=ジョーンズが取り上げられています。聖書や神話・文学をテーマにした作品を数多く手掛けたバーン=ジョーンズですが、ここでも多数展示されていました。特に、キリスト教の騎士道精神を描いた《慈悲深き騎士》やユピテルとユノの娘を描いたとされる《三美神》など、何度も観たくなる作品が並んでいました。

 

最後の第5章では、ラファエル前派の流れを汲む商品を多数生み出した、バーン=ジョーンズの友人でもあったウィリアム・モリスの装飾芸術が紹介されていました。モリスはモリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年以降はモリス商会)を設立し、インテリアや美しいデザインの商品を制作しました。こうした生活と芸術を一体化するアーツ・アンド・クラフツ運動は、世界に大きな影響を与えました。ここでは、壁紙やチェア、デザイン、装飾用織物などの装飾芸術品が展示されていました。

 

ラファエル前派そのものは、1853年にミレイがロイヤル・アカデミーの准会員なったことやメンバー間の恋愛問題のこじれなどを契機に分解し始めます。こうしてラファエル前派としての実質的な活動は数年で終止符を打つことになりますが、バーン=ジョーンズやモリスなど、ラファエル前派の流れを汲む芸術は続きます。そうした意味でも、印象派とも比肩される芸術運動とみなされることもあるようです。今回の展覧会は、こうした貴重な芸術運動の流れを俯瞰できる内容になっていました。

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2020年01月13日|カテゴリー:2020年投稿, 展覧会