【感想】小磯記念美術館美術講座「自然災害と文化財レスキュー ~2つの大震災を経て~」(学芸係長・廣田生馬)に参加

神戸市立小磯記念美術館で開催されている美術講座に参加しました。今回は、2019年度美術講座の第4回で、小磯記念美術館の学芸係長・廣田生馬さんによる「自然災害と文化財レスキュー ~2つの大震災を経て~」でした。

 

今回の美術講座では、災害時に学芸員の方々がどのような活動をしているかという貴重な話が聞けました。特に、1995年の阪神・淡路大震災と2011年の東日本大震災のときの様子が詳しく語られました。

 

1995年の阪神・淡路大震災では、震災発生日に小磯記念美術館に到着できた学芸員は、当時3名おられた学芸員のなかで廣田生馬さんだけだったそうです。美術講座では、震災直後の様子を臨場感のある写真とともに紹介されていました。

 

小磯記念美術館の入口前にある庭は、道路から少し段差がありますが、この段差はこのときの震災で発生したもので、それまでは道路と同じ高さの平面だったそうです。また、屋上公園が陥没している様子も写真で紹介されていました。

 

小磯記念美術館では、震災時に小磯良平大賞展が開催されていましたが、作品本体への被害は特になかったようです。しかし、額を吊るすS字金具などの変形の様子から、いかに激しい揺れだったかとういうことが想像できました。

 

液状化現象に見舞われた小磯記念美術館のある六甲アイランドでは、交通網が断絶し、対岸でのLPガス漏れに伴う避難勧告もあり、神戸市の職員でもある学芸員たちは避難所の支援活動もなされています。そして、その後の美術館の再開に関する話や、被災した画家・小松益喜に関する話などが熱く語られていました。

 

一方、2011年の東日本大震災では、文化庁がレスキュー事業を立ち上げ、全国美術館会議などが協力することになり、廣田学芸員も福島に赴き、文化財レスキュー活動に従事されています。このときの様子も写真などを通して、詳しく解説されていました。

 

当然ながら、テレビや新聞などでは人命救助を中心とした活動が大々的に報道されますが、そうした活動の裏では、美術館や博物館など美術に関わる人々もまた、貴重な文化財を守るべく奮闘されていることがよくわかりました。

 

今回は、偶然にも阪神・淡路大震災からちょうど25年目に当たる1月17日に、学芸員の視点から見た大震災という貴重な話が聞けました。そして、廣田学芸員の人情味あふれる性格が、その熱い語り口調からもよく伝わってきました。画家でも学者でもなく、学芸員という立場で、芸術と人々とを繋ぐ仕事をされている方々の仕事が少し垣間見れた気がしました。

2020年01月27日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, イベントレビュー