【感想】「2020年度コレクション展I 動く!美術」(兵庫県立美術館、2020/3/20~9/22)レビュー

兵庫県立美術館で開催されている「2020年度コレクション展I 動く!美術」(会期:2020年3月20日~9月22日)を鑑賞してきました。当日は、特別展「開館50周年 超・名品展」をじっくり鑑賞した後、そのままコレクション展へと突入しました。

 

今回は、コロナ対策のため、会場内でゆっくり座ることができないこともあって、体力勝負のようなところもありました。というのも、兵庫県立美術館のコレクション展は、通常、展示室1~6と金山平三記念室、小磯良平記念室の全8室を使って開催されていますので、特別展以上の規模になることも珍しくないのです。

 

コレクション展の構成は以下のとおりです。

1.<特集>動く!美術 ―動きはどう表現されてきたか―
 第1章 命の鼓動-動く人・動く動物
 第2章 うつろう自然-ゆらめく水 かがやく光 そよぐ風
 第3章 奔る線 踊る色彩
 第4章 天のしるし
2.表現主義の版画
3.近現代の彫刻
4.洋画・日本画の名品-時代は動く、美術も動く
小磯良平記念室 金山平三記念室

 

今回の目玉企画でもある、<特集>「動く!美術」は、非常にコンセプトが分かりやすく、新しい視点から作品を見ることができるようになりました。第1章では、「動く人」や「動く動物」が絵画や彫刻でどのように表現されているかに注目しています。第2章では、水や光、風といった「自然の動き」が作品の中でどのように表現されているかを探っています。

 

そして、第3章では、これまで理解するのに苦労していたアンフォルメルや抽象表現主義の作品を「動き」という観点から捉えると、こうした解釈ができるのかと妙に納得させられました。ここでは、具体美術の作品を中心に、描く行為自体が重視され、身体の動きそのものが作品のなかに取り込まれている様子がよく分かりました。画面を舞台に活動していた画家たちの全身から溢れるエネルギーが伝わってくるようでした。

 

さらに、第4章では、珍しく展示室にBGMが流れているな、と思っているとこれも作品の一部でした。鶴の群れの経時変化を捉えた一連の写真と、その鶴の動きを音符に見立てて創作された音楽とからなるインスタレーションでした。音楽を全部聴こうとすると1時間以上かかると思われますが、不思議な感覚が心地よい作品で、ついつい長居しそうになってしまいます。

 

その他、表現主義の版画コーナーでは、ジェームズ・アンソールやケーテ・コルヴィッツ、エゴン・シーレ、オスカー・ココシュカ、カンディンスキー、ルオーなど、そうそうたる画家たちの作品が展示されていました。改めて、コレクションの豊富さに驚かされました。

 

特別展と比べると、人口密度が圧倒的に少ないコレクション展ですが、それはそれで、好きな方にとっては至高の時間を味わえる貴重な芸術空間でもあります。そんな密かな楽しみを謳歌したい方は、友の会への入会がお勧めです。特別展の鑑賞は回数制限がありますが、コレクション展に関しては何度でも鑑賞することができます。

2020年06月09日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー