西宮市大谷記念美術館で開催されている「メスキータ展」(会期:2020年4月4日~6月27日)に行ってきました。この展覧会は巡回展で、これまで、東京ステーションギャラリー(2019/06/29~08/18)、佐倉市立美術館(2020/01/25~03/05)、西宮市大谷記念美術館で開催されています。今後の予定は、宇都宮美術館(2020/07/05~08/30)、いわき市立美術館(2020/09/12~10/25)となっています。
サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868~1944)は、オランダで活躍した画家・版画家・デザイナーで、教え子に錯視を利用した版画で有名なマウリッツ・コルネリス・エッシャーがいることでも知られています。また、メスキータはユダヤ人で、ナチス・ドイツによりアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に送致され、ガス室で殺害された悲劇の画家でもあります。
今回の展覧会は、こうしたメスキータの作品を大々的に紹介する日本初の機会となりました。出品作品は、ドイツの個人コレクターの所蔵品を中心に、200点を超える内容になっています。
展覧会の構成は以下のとおりです。
第1章 メスキータ紹介
第2章 人々
第3章 自然
第4章 空想
第5章 ウェンディンゲン
展覧会の様子は、西宮市大谷記念美術館がYouTubeで公開している、CATV市広報番組「フロムにしのみや」が制作した下記の動画を見るとその魅力がよく分かります。思わず直接鑑賞したくなってしまう内容になっています。
実際に鑑賞した感想としては、やはりメスキータの最大の魅力は白黒のコントラストが明確な版画作品であることがわかります。それも写実的に描いた作品ではなく、抽象的にデフォルメされた主題とグラフィック的な工夫が凝らされた作品に抜群のセンスを感じます。
息子を描いた肖像画《ヤープ・イェスルン・デ・メスキータ》を始め、《トーガを着た男》、《エクスタシー》、《父》、《ファンタジー:稲妻を見る二人》など、人物を描いた作品が見事です。さらに、動植物を描いた作品も数多く展示されており、その写実性とデフォルメを融合させた姿が心地よく、思わず見とれてしまいます。
一方、第4章の「空想」では、メスキータのドローイング作品が展示されていましたが、その独特の世界観が面白いですね。なぜか、二人の人物が向かい合っている姿が描かれていることが多く、ここにメスキータの無意識のメッセージが込められているようです。
展覧会の図録は、縦約34cm×横約24cm×厚さ約1.8cmという大型の変形スタイルで、ページを180°開くことができる糸綴じになっています。