【感想】「生誕140周年記念 熊谷守一展」(伊丹市立美術館、2020/6/23~7/31)レビュー

伊丹市立美術館で開催されている「生誕140周年記念 熊谷守一展」(会期:2020年6月23日~7月31日)に行ってきました。この展覧会は、伊丹市立美術館を皮切りに、天童市美術館(2020年9月26日~10月25日)、奥田元宋・小由女美術館、石川県立美術館へと巡回する予定になっています。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

わたしはわたし
第一章 人生をたどる
第二章 絵をひもとく
第三章 こだわりを楽しむ
気ままに生き、気ままに描く

 

天童市美術館の池田良平館長が、動画で今回の展覧会の特徴について解説されています。

 

熊谷守一(くまがい もりかず、1880-1977)と言えば、「モリカズ様式」と呼ばれる、単純化されたフォルムと明瞭な色使いで描く画風が有名ですが、そこに至るまでに、さまざまな変遷があったことがよくわかりました。

 

展覧会では、両親の肖像画を始め、初期の写実的な作品からフォービスム的な作品まで多数展示されていました。《夜》《赤城の雪》《ポプラの並木》《向日葵と女》など、色彩的にも興味深い作品が印象に残りました。

 

とは言うものの、やはり熊谷守一と言えば、晩年に確立された「モリカズ様式」と呼ばれる一連の作品群が最大の魅力でしょう。昆虫や魚、動物、植物といった身近なものを題材に選び、それらを抽象化しつつ、シンプルな形と心地よい色彩の階調が美しい作品となっています。

 

今回の展覧会でも、こうした魅力的な作品が数多く展示されていました。展覧会の導入部となる「わたしはわたし」では、《伸餅》《温泉》《かまきりと彼岸花》《鬼百合に揚羽蝶》《立秋の朝》《はぜ紅葉》といった「モリカズ様式」を代表する作品が展示されており、鑑賞者を一気にモリカズ・ワールドへと誘い入れてくれます。

 

展示会場の解説パネルを通して、熊谷守一の考え方や生き方が紹介されていましたが、植物や動物、昆虫たちに対する熊谷守一の温かいまなざしや好奇心が伝わってきて、思わずその生き方にも憧れてしまいます。

 

本人は否定していたようですが、随所に仙人的な生き方が垣間見られて面白いですね。毎日、忙しい日々を送っている現代人であればこそ、こうした作品を通して、牧歌的で脱世間的な世界観に癒やされることになると思います。

 

図録やグッズ類は、地下の展示室続きのショップコーナーではなく、1階の一部屋を使って販売されていました。図録「熊谷守一 わたしはわたし」は、公式図録兼書籍として求龍堂より刊行(2,860円)されています。

 

2020年06月29日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー