【書評】「日経おとなのOFF 今こそ視たい!美術展2020秋冬」(2020/8/31発売、日経BP)レビュー

「日経おとなのOFF 今こそ視たい!美術展2020秋冬」(日経BP、税込1,320円)が2020年8月31日に発刊されました。通常、美術展を特集した雑誌やムック本は、年末から年初にかけて発刊されるのが通例ですが、日経BPからは毎年、秋から冬にかけての展覧会に焦点を絞ったムック本も発刊しています。そうした意味では、とても貴重な一冊だと言えます。

 

というのも、今年の年初に発刊された諸々の美術展情報誌は、新型コロナウイルスの影響で軒並み展覧会が中止となったせいで、ほとんど使い物にならなくなってしまったからです。実を言うと、このムック本でさえ、中止になった展覧会が一部掲載されています。

 

このムック本の特徴は、特定の展覧会に焦点を当てて、その魅力を紹介するというより、秋から冬にかけて全国で開催されている展覧会に出品されている作品を横断的に取り上げて、それらを比較しつつ紹介しています。ですので、このムック本を読んで、どの展覧会に行くかを決めるのは難しいかもしれません。

 

ただし、例外として、今年後半の注目展覧会である「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立西洋美術館:~10/18、国立国際美術館:11/3~2021/01/31)と大塚国際美術館の紹介はかなり詳細になされています。

 

「日経おとなのOFF」シリーズは、いつも内容がかなり濃いので、その点は満足できるでしょう。鑑賞者としてレベルを上げるには最適のムック本かもしれません。ここで、目次の主な見出しを挙げておきましょう。

 

・見比べて!ここにフォーカス!
・「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」でもっと味わいたい10点
・花の絵の華麗なヒストリー
・ゴッホ、色を追い求めた人生
・時代を切り開いた印象派の女性画家たち
・きらめく日本美術案内
・この人を知れば浮世絵の流れがわかる!
・日本で今見られる名画でつづる教養としての西洋美術史入門
・現代アート展覧会の楽しみ方
・中野京子さんが案内 大塚国際美術館で読み解く西洋の“絶対名画”

 

こうした見出しを見ても分かりますが、まさに美術の教養を磨くためのムック本になっています。しっかり読み込めば学芸員顔負けの知識が身につきそうです。

 

巻末には、2020年8月~2021年1月にかけての美術館カレンダーが掲載されています。このカレンダーは、北海道・東北エリア、関東エリア、中部エリア、近畿エリア、中国・四国・九州エリアごとに色分けがなされているので、チェックしやすくなっています。さらに、秋から冬にかけて開催されている66の展覧会の簡便な紹介が11ページに渡って掲載されているので、これをチェックしておけば気になる展覧会を見逃すことはないでしょう。

2020年09月11日|ブログのカテゴリー:2020年投稿