【感想】「池大雅-文人たちの交流-」(京都文化博物館、2020/8/12~9/22)レビュー

京都文化博物館で開催されている「池大雅-文人たちの交流-」(会期:2020年8月12日~9月22日)に行ってきました。この展覧会では、2013年に閉館した池大雅の私設美術館「池大雅美術館」から京都府に寄贈されたコレクションが大々的に公開されています。池大雅の最初期の墨書から、愛用した机や違い棚など、多岐にわたって展示されていました。

池大雅-文人たちの交流-

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

第1章 大雅、誕生-書との出会い
第2章 大雅、諸国をめぐる
第3章 大雅、筆墨の世界
第4章 大雅へのあこがれ−大雅堂をめぐる人々

 

第1章では、池大雅が3歳で書いたという《金山》という書が展示されていました。「金山」という字の周りに小さな落書きがあるのが、当時の日常を想像させてくれます。また、大雅が7歳の時に書いた書を見て「神童」と評した萬福寺の杲堂元昶による《杲堂之偈》も展示されていました。

 

第2章では、池大雅らしさが満喫できる作品が並んでいましたが、なかでも、《寒山拾得図》は、丸く描かれた中国唐の時代の高僧・寒山と拾得の姿が実に味わい深く描かれていました。また、シンプルな筆致の《秋江邨図》が実に心地よい感動を与えてくれます。そして、大雅の人柄が偲ばれる《山亭小酌之図》では、孤高の文人ではなく、秘境に住する楽しげな文人たちの姿が描かれていました。

 

第3章では、墨を指や爪に付けて描く「指頭画」と呼ばれる作品が展示されていました。興味深い作品として《三酸図》がありましたが、これは儒者と道士、仏僧の三人が酢を舐めて、その時の酸っぱい表情を描いた図で、信じる対象は違っても同じ人間なのだという意味合いが込められているようです。ここでは、大雅の妻・玉蘭の作品も展示されていました。

 

第4章では、池大雅が写経した《般若心経》や大雅の手形を写し取った《大雅五十歳 歳旦手形木版》、大雅の死後に弟子たちが設立した「大雅堂」の扁額など、池大雅にまつわる資料が展示されていました。

 

展示数は約70点でしたが、池大雅の人となりを知ることができる楽しげな作品群を楽しめました。この展覧会では、図録は販売されていませんでしたが、出品作品リストを兼ねたパンフレットが無料配布されていました。主要な作品がカラーで印刷されており、後で展覧会を振り返る際にも非常に役立つ優れものです。

2020年09月16日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー