京都文化博物館で開催されている「木島櫻谷と京都画壇 京都 三条・大橋家コレクション」(会期:2020年8月12日~9月22日)に行ってきました。この展覧会は、京都 三条・大橋家コレクションの紹介企画として、大橋家4代の大橋松次郎と深い交流のあった木島櫻谷(このしま おうこく)・谷口香嶠(たにぐち こうきょう)・猪飼嘯谷(いかい しょうこく)ら京都画壇の作品と共に、大橋家の歴史などが紹介されていました。
展覧会の構成は特になく、木島櫻谷から始まり、谷口香嶠、猪飼嘯谷らの日本画、そして、彼らが作画した陶磁器や漆工、木工、団扇など、幅広い作品が並んでいました。
木島櫻谷の作品は、最も出品数も多く、今回の展覧会の中心的な位置づけでした。やはり、鹿や鷹、白鷺、孔雀、百舌、牛など、動物の描き方は抜群です。鹿を描いた《初夏・晩秋》という作品では、初夏の鹿と晩秋の鹿の様子が見事に描かれていました。狸を描いた《月下遊狸》も、背景の植物や月の描写と相まって味わい深い作品になっています。
谷口香嶠の作品は、ストーリー性のある人物画が魅力で、《義経勝浦上陸図》《素尊得霊剣図》《句意盆踊図》など、印象的な作品が展示されていました。また、猪飼嘯谷との合作となる《舞楽図衝立》では、鮮やかな朱色の衣装をまとった人物の舞を踊る姿が美しい作品です。
猪飼嘯谷の作品では、赤いカツラを大胆な筆致で描いた《能楽内外詣図》や黒(紺?)の背景に金泥で描かれた《観音大士図》など、意表を突くような作風が印象的でした。
他にも、望月玉泉《春堤釣魚図》や幸野楳嶺《檀特山》、都路華香《蓬莱仙境》、芝千秋《紅白椿図屏風》、菊池契月《蓮池》、伊藤小坡《秋乃夜》など、個性溢れる作品が楽しめました。
最後の大橋家のコーナーでは、さまざまな関連資料が展示されていました。木島櫻谷は大橋松次郎と「旅行した際には絵はがきを描いて送る」という約束をしていたようで、大橋松次郎宛てに送られた数多くの絵はがきや年賀葉書が展示されていました。また、芝千秋が大橋松次郎に送った葉書を集めた《千秋帖》では、その年の干支に合わせた宝船が描かれており、何とも楽しい気分になる作品でした。
この展覧会では図録はありませんでしたが、作品リストと共に、少し前に開催されていた「三条御倉町 大橋家の歴史と美術」(会期:2020年3月14日~4月19日)のパンフレットが配布されていました。