【感想】「2020年度 第2回コレクション展」(京都国立近代美術館、2020/7/22~10/4)レビュー

京都国立近代美術館で開催されている「2020年度 第2回コレクション展」(会期:2020年7月22日~10月4日)を鑑賞しました。広い展示スペースを有効に使った、ゆったりとして落ち着いた展覧会でした。

 

京都国立近代美術館のコレクション展では、スマホアプリを使った音声ガイドを無料で利用できますので、今回はこれを利用しました。また一部の作品を除き写真撮影も可能ですので、写真を撮っておいて、自宅に帰ってから再度作品を見ながら聞くこともできます。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

A 西洋近代美術作品選
B 屏風祭
C #Stay_Connected つながるための場所
D 近代工芸の吉祥文
E 特集:樂直入(十五代吉左衞門)の『シリーズ盌 大地に眠る精霊たち』
F 京の風景
G 東松照明「京まんだら」

 

大型美術館ならではの、充実したコレクション展になっています。何度か繰り返し鑑賞したくなる内容です。いつもながら、コレクション展は鑑賞者も少なく、ゆったりと贅沢な時間を楽しむことができます。

 

「A 西洋近代美術作品選」では、クロード・モネの作品が2点のみ展示されていました。ひとつは、川沿いに立つ、芽吹く前の柳の木が二本描かれた《春、エプト川の柳》という作品です。川面には新緑の草や柳の幹が写っており、印象派特有の光が美しい作品になっています。そして、もうひとつは、モネが連作に取り組んでいた「積み藁」シリーズの一作となる《積み藁、ジヴェルニー、朝の印象》です。この作品は初期に製作した作品のひとつになります。いずれの作品もモネ特有の美しい色彩表現が魅力の作品でした。

 

「B 屏風祭」では、広い展示スペースが必要となる屏風作品がゆったりと展示されていました。後期展示では、富岡鉄斎の《富士遠望》と《寒露渓図》が公開されていました。いずれも鉄斎らしい大地から力が溢れてくるような感覚を覚える作品です。

 

また、前田青邨の《竹取物語図屏風》と平山郁夫の《画禅院青邨先生帰還浄図》が対面で展示されていて、師弟関係が偲ばれる構図になっています。前田青邨《竹取物語図屏風》は、かぐや姫が天人に見守られながら天に昇っていく姿を描いていますが、平山郁夫《画禅院青邨先生帰還浄図》は、天人たちを伴った仏様が師の前田青邨を迎えに来た様子を描いています。

 

他にも、下保昭《岩漿吐焔》が展示されていましたが、これは真っ赤に燃えるマグマを描いているのでしょうか。この作品は、通常の屏風のように折り曲げて置くスタイルではなく、広げて壁に展示されていました。印象に残る作品のひとつでした。

 

「E 特集:樂直入(十五代吉左衞門)の『シリーズ 大地に眠る精霊たち』」では、2008年に制作された一連の陶器が展示されていましたが、いずれも色合いと形状が絶妙に美しく、思わず見とれてしまいました。

 

他にも、「D 近代工芸の吉祥文」で展示されていた河井寬次郎の陶器や「F 京の風景」で展示されていた加藤源之助の《出町の冬》、川西英の《石庭 龍安寺》《天の橋立》など、印象に残る作品が幾つかありました。

 

「C #Stay_Connected つながるための場所」では、コロナ禍での美術館のあり方をテーマにした作品が展示されていて、芸術を通していかに人と人とが出会い、つながることが大切かを考える機会になっています。また、「G 東松照明『京まんだら』」では、同時に開催されている企画展「京(みやこ)のくらし―二十四節気を愉しむ」とコラボした内容になっていて、京の人々のくらしそのものに焦点が当てられています。

 

さまざまな企画が混在するコレクション展ではありますが、それぞれにストーリーがあり、充実した内容になっていました。

2020年09月19日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー