【感想】「キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠」(美術館「えき」KYOTO、2020/9/12~10/25)レビュー

美術館「えき」KYOTOで開催されている「キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠」(会期:2020年9月12日~10月25日)に行ってきました。この展覧会は、ポーランド出身でエコール・ド・パリを代表する画家の一人、キスリング(1891-1953)の初期から晩年までの作品を俯瞰できる内容になっていました。

キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠キスリング展 エコール・ド・パリの巨匠

 

「エコール・ド・パリ」という言葉は「パリ派」という意味で、20世紀前半に、世界各地からパリのモンマルトルやモンパルナスに集まってきて活動していた画家たちのことです。シャガールやモディリアーニ、パスキン、ユトリロ、ローランサン、藤田嗣治など、錚々たる画家たちが集まっていました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

1910-1940 キスリング、エコール・ド・パリの主役
1941-1946 アメリカ亡命時代
1946-1953 フランスへの帰還と南仏時代

 

以上のように、年代別に大きく3つに分かれていますが、8割強の作品が最初の「1910-1940 キスリング、エコール・ド・パリの主役」に集中しています。

 

キスリングと言えば、まずメランコリックな雰囲気が漂う女性の肖像画が思い浮かびますが、この展覧会では、そうした肖像画以外にも、静物や風景、花、裸婦を描いた作品が展示されています。

 

初期の作品は、セザンヌやキュビスムの影響を受けた様子も窺えますが、徐々にキスリング独自の世界に入っていきます。やはり、キスリングの肖像画は独特で、メランコリックな人形を描いているかのようです。一方、肖像画に限らず、静物画や風景画においても、色使いが鮮やかでビビッドな感じが何とも言えない魅力を放っていました。

 

花を描いた作品では、平面的に描いている作品が多い印象がありました。そんな中で、《ミモザの花束》はブルーのシンプルな背景に、ミモザの黄色い小さな花々が盛り上がった絵の具で表現されていて、図録などの写真では決して分からなかった魅力が味わえました。

 

肖像画では、強い個性と意志が伝わってくる《ジプシーの女》や、圧倒的な存在感がある《マルセル・シャルタンの肖像》、チラシや図録の表紙にも採用されている《ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)》などが特に良かったです。

 

また、裸婦を描いた《赤い長椅子の裸婦》も見事な出来栄えでした。風景画では、《サン・トロペ》や《タマリス》など、幻想的な色彩感覚を味わえる作品が印象に残りました。

 

この展覧会は巡回展で、これまでに、東京都庭園美術館、岡崎市美術博物館、秋田県立美術館、奥田元宋・小由女美術館、北海道立近代美術館、鹿児島市立美術館、美術館「えき」KYOTOと全国を巡回しています。図録(2,550円税込)には、美術館「えき」KYOTOで展示されていない作品も何点か掲載されていました。日本では12年ぶりのキスリング回顧展になるそうで、貴重な展覧会でした。

2020年10月04日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー