【感想】「日本画家・福田眉仙展」(姫路市立美術館、2020/10/10~11/15)レビュー

姫路市立美術館で開催されている「日本画家・福田眉仙展」(会期:2020年10月10日~11月15日)に行ってきました。この展覧会は、現在の相生市出身の日本画家・福田眉仙の展覧会になります。

姫路市立美術館日本画家・福田眉仙展

 

福田眉仙は、宮田其渓や久保田米僊、橋本雅邦に学び、岡倉天心からのアドバイスに従って中国に渡り多数のスケッチを残しています。この展覧会では、福田眉仙以外にも、宮田其渓や久保田米僊、橋本雅邦の作品も少し展示されていました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

第1章 修業時代
第2章 大陸を描く 中国・韓国の風景
第3章 国立公園と日本の風景
第4章 支那三十図巻と中国スケッチ

 

第1章では、福田眉仙14歳の作品《蓮花図》(襖五面)から始まります。《武蔵玉川之晩景》なども、見事な写実性に驚かされます。また、彼に絵を教えた宮田其渓や久保田米僊、橋本雅邦の作品も展示されていました。写実的でどこか温かみのある福田眉仙の画風も、こうした師たちの影響が大いにあるようです。

 

福田眉仙は岡倉天心の勧めに従って中国に渡って旅をしましたが、第2章では、その時の経験をもとに手がけた作品が展示されています。《萬里長城雪景図》のような情緒溢れる柔らかい作品も良いですね。他にも数々の山水画を描いていますが、どこか優しさが感じられる作品が多い印象でした。

 

第3章では、福田眉仙の代表作《富士五胡》が登場します。この作品は、1940年に開催予定だった幻の東京オリンピックに向けて制作していた《日本の国立公園十二景》の中で唯一現存が確認されている作品です。金地の屏風に描かれた《富士五胡》は、濃緑色の山々や白い雲霧に取り巻かれた富士の勇姿を描いていて実に美しい作品です。

 

この章では、日本の美しい情景を描いた数々の作品が展示されています。《蓬莱峡》という作品では、小さな車が描き込まれています。写実性にこだわった福田眉仙の心意気を感じる作品でもあります。

 

第4章では、《支那三十図巻》や《中国スケッチ》が展示されています。制作年代からすると第2章に相当しますが、その膨大な量と重要性を鑑みて最終章に持ってきたようです。ここでは、中国らしい風景が並んでいましたが、《中国スケッチ》の淡い色彩はその美しさを際立たせていました。

 

この展覧会の図録は48ページの薄いものですが、1,000円と手頃な価格なのでお求めやすいと思います。展覧会を振り返る際にも役立ちます。

2020年10月18日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー