【感想】「2019年度 コレクション展Ⅰ 境界のむこう」(兵庫県立美術館、2019/3/16~6/23)レビュー

兵庫県立美術館では、特別展や共催展と並行して、館内所蔵作品を扱ったコレクション展(旧:県美プレミアム)が開催されます。2019年度の最初は、特集「境界のむこう」(会期:2019年3月16日(土)~ 6月23日(日)です。

兵庫県立美術館「2019年度コレクション展Ⅰ 境界のむこう」兵庫県立美術館「2019年度コレクション展Ⅰ 境界のむこう」

 

特集「境界のむこう」では、私たちの身の回りに存在するさまざまな境界をテーマに、作品が展示されています。

 

<境界のむこう>

第1章 領域
第2章 線をひく
第3章 東/西
第4章 生/死
第5章 他者/自己
第6章 現実/非現実

展示室5(彫刻展示室)ウラとオモテ/もうひとつの世界
小磯良平記念室 部屋のうちそと
金山平三記念室 境界を歩く

 

第1章から第6章まで、上記のタイトルに基づく境界の観点から作品が展示されていますが、今回は、展示室5(彫刻展示室)、小磯良平記念室、金山平三記念室でも境界に関連するテーマに基づいて展示されています。

 

特集「境界のむこう」は、これまで3回鑑賞(友の会の会員証を提示すると何回でも無料で鑑賞できます)していますが、いつもながら兵庫県立美術館のコレクション展は会場が広く作品数もかなりの数に上るので圧倒されてしまいます。

 

今回の「境界のむこう」では、1階で展示されている作品だけでも、第1章(19点)、第2章(17点)、第3章(11点)、第4章(26点)、第5章(22点)、展示室5西(13点)、展示室5東(14点)と全部で122作品にも達します。さらにこれに加えて、2階の展示室では、第6章(41点)、小磯良平記念室(18点)、金山平三記念室(17点)と全部で76作品となり、1階と2階を合わせると198作品と驚くべき展示数となります。

 

特別展を鑑賞した後で、どうせコレクション展だからすぐに見終わるだろうと高を括っていると、時間も体力も限界に達し、とんでもないことになります。その割に、いつ行っても特別展と比べると圧倒的に空いているので、実に贅沢な時間を過ごせるわけですが、一方で何とももったいない気もします。

 

さて、今回の「境界のむこう」の内容についてですが、テーマ的には比較的わかりやすい構成になっていました。前回の特集「類は友を呼ぶ」が、かなり理解しやすい展示構成だったので、そこまでは行かないかもしれませんが、それでもよくまとまっていたと思います。

 

印象に残った作品としては、第4章 生/死の浜田知明「初年兵哀歌」シリーズがありました。先般テレビで紹介されていたこともあって余計に印象に残ったわけですが、やはり多少なりとも作品の背景や意味がわかってくると俄然作品が心の中に入ってきます。他にも、正木隆「DIVING work 02-1」や古家新「日の出(絶筆)」なども胸に迫ってくるものがありました。

 

平成30年度に購入されたイサム・ノグチ「小さなイド」も楽しい作品でした。第6章 現実/非現実では、浅原清隆「郷愁」の何とも不思議な境界に奇妙な懐かしさを感じ、横尾忠則「日本原景旅行」シリーズの強烈な色彩も印象的でした。さらに、小磯良平記念室の「洋裁する女達」では、生き生きとした日常が何とも斬新な構図で描かれており、昨年の「小磯良平と吉原治良」展以来の再会に嬉しくなりました。

 

以上、簡単に振り返ってみましたが、やはりコレクション展に関しては現代アートが多いこともあるので、より作品が身近に感じられるような作品解説や展示方法にチャレンジしてもらえると有り難いですね。

 

2019年06月14日|ブログのカテゴリー:2019年投稿, 展覧会レビュー