【感想】「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立国際美術館、会期:2020/11/3~2021/1/31)レビュー

国立国際美術館で開催されている「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(会期:2020年11月3日~2021年1月31日)に行ってきました。この展覧会は、ロンドン・ナショナル・ギャラリー史上初となる全61作品に及ぶ大規模所蔵品展となっています。61作品全てが初来日作品で、その中にはフェルメールやレンブラント、ゴッホらの作品も含まれており注目の展覧会になっています。

国立国際美術館「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」

 

この展覧会は混雑が予想されることから、会期中の全日程において日時指定制が導入されています。私は、友の会の会員向けに設定された内覧会に参加しました。当日は、各展示室あたりの展示数が比較的少ないこともあって、ゆったりと鑑賞することができました。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

Ⅰ イタリア・ルネサンス絵画の収集
Ⅱ オランダ絵画の黄金時代
Ⅲ ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
Ⅳ グランド・ツアー
Ⅴ スペイン絵画の発見
Ⅵ 風景画とピクチャレスク
Ⅶ イギリスにおけるフランス近代美術受容

 

展覧会の内容については、国立国際美術館に先行して開催された国立西洋美術館で収録された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展:オンライン・ガイドツアー」(約30分)がかなり充実していますので、鑑賞前に観ておくとより一層楽しめると思います。

 

音声ガイドでも触れられていない質の高い内容が、ロンドン・ナショナル・ギャラリー学芸部長のクリスティン・ライディング氏によって解説されています。英語での解説ですが、日本語の字幕付きですので、英語が苦手な方は字幕を参考にしつつお楽しみ下さい。

展覧会の全体的なコンセプトとしては、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」が収集してきた美術作品を通して、美術館の成り立ちやその概要を知ることができるような構成になっていました。

 

動画で紹介されていない作品のなかから印象的だった作品を幾つかご紹介します。

 

Ⅰ章では、ヤコブ・ティントレット《天の川の起源》ですね。この作品は、そのタイトル通り、天の川(ミルキーウェイ)の起源について絵画化されています。ユピテルの妻ユノからほとばしる母乳が天に届き天の川になった情景が描かれていました。

 

Ⅴ章では、エル・グレコ《神殿から商人を追い払うキリスト》がありましたが、これは聖書でも有名なエピソードです。鮮やかな色彩でその情景を見事に描いています。それから、スルバランの《アンティオキアの聖マルガリータ》です。この作品は、長官に求婚されたものの信仰を理由に断ったことから逮捕され拷問を受けたマルガリータが、牢屋のなかで龍の姿をした悪魔に飲み込まれますが、十字架の力で龍の腹から脱出したというエピソードを基にしています。マルガリータの気品溢れる表情と龍の姿が好対照です。

 

Ⅶ章では、印象派の作品が幾つか展示されていましたが、印象派の魅力が最大限に発揮されている作品群のようには感じませんでした。そんな中で、ルノワールの《劇場にて(初めてのお出かけ)》という作品は、初々しい少女の心情が見事に描かれていました。また、セザンヌの《プロヴァンスの丘》は、セザンヌが得意とするブロック状の形状と緑色の植物が調和している様子が美しい作品でした。

 

この展覧会は、全部で61作品からなりますので、展示数としては決して多くない分、質の高い作品がゆったりと鑑賞できるようになっていました。図録は2,900円で、カバーは2種類から選べるようになっています。ひとつは、ゴッホ《ひまわり》&フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》で、もう一つは、クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》&ターナー《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》となっています。

2020年11月27日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー