【感想】「京都の美術 250年の夢 第1部~第3部 総集編 -江戸から現代へ-」(京都市京セラ美術館、会期:2020年10月10日~12月6日)レビュー

京都市京セラ美術館で開催されている「京都の美術 250年の夢 第1部~第3部 総集編 -江戸から現代へ-」(会期:2020年10月10日~12月6日)に行ってきました。京都市京セラ美術館は、従来の京都市美術館が大規模改修とネーミングライツを経て新たに生まれ変わった美術館です。

今回の展覧会は、もともと第1部・第2部・第3部の3部構成の会期で開催される予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で美術館のリニューアルオープンが3月21日から5月26日にずれ込んだことから、総集編という形で開催されることになりました。

京都市京セラ美術館「京都の美術 250年の夢 第1部~第3部 総集編 -江戸から現代へ-」京都市京セラ美術館「京都の美術 250年の夢 第1部~第3部 総集編 -江戸から現代へ-」

<本来の開催予定>

京都市京セラ美術館開館記念展「京都の美術 250年の夢」
最初の第一歩:コレクションの原点(会期:2020年3月21日~4月5日)
第1部 江戸から明治へ:近代への飛躍(会期:2020年4月18日~6月14日)
第2部 明治から昭和へ:京都画壇の隆盛(会期:2020年7月11日~9月6日)
第3部 戦後から現代へ:未来への挑戦(会期:2020年10月3日~12月6日)

 

上記予定のうち、「最初の第一歩:コレクションの原点」に関しては、既に2020年6月2日~9月6日の会期で開催されました。そして、残りの第1部から第3部の展示内容が、今回の「第1部~第3部 総集編」となって再編成されて開催されました。

 

ただし、第1部~第3部は本来、本館の北回廊1階のみでの開催予定でしたが、総集編は本館の北回廊1階と北回廊2階を同時に利用した拡大バージョンになっていて、かなりお得な展覧会になっています。

 

入館方法も、当初は予約者限定になっていましたが、9月15日から予約優先性に切り替わり、予約をしていなくても入館できるようになりました。そもそも当美術館では、入館時間を30分刻みで予約するシステムですので、遠隔地の方にとってはかなりハードルが高い状況でした。

 

予約案内では、「観覧時間は1展覧会につき1時間以内とさせていただきます」というメッセージが書かれていましたが、とてもそんな短時間で鑑賞できるような内容ではありませんでした。当日は、予想外に空いていましたので、1階と2階を合わせて3時間程度かけて鑑賞することができました。勿論、混雑の状況次第では足早に鑑賞する必要がありますが、幸いなことに平日ということもあってじっくり鑑賞することができました。

 

展示内容に関しては、総集編ということで、絵画も工芸もかなり質の高い作品が多く、満足度の高い内容でした。ただし、作品リストに記載されている通りの順序で展示されている訳ではありませんでしたので、鑑賞している作品がいつの時代の作品なのか途中で分からなくなってしまうこともありました。

 

印象に残った作品は多数ありましたが、ここではその一部をご紹介します。

 

第1部では、龍と虎を描いた大型のふすま絵となる長沢芦雪《龍図襖 虎図襖》と不思議な造形と色彩が美しい奥田頴川(えいせん)《交趾釉兕觥形香炉》が印象に残りました。長沢芦雪《龍図襖 虎図襖》の虎図は、そもそも本人が虎を観たことがなく、猫をモデルに描いたがそうで、どこか愛嬌のある虎でした。ただ、その躍動感溢れる姿は流石です。一方、奥田頴川は江戸時代中後期の陶芸家で《交趾釉兕觥形香炉》という作品は、上部が虎の頭を模した香炉で緑色の美しさが際立っていました。

 

第2部は、展示数も多く良い作品が目白押しでした。美しい絵画ということでは、雪と鷺の美しさが際立った榊原紫峰《雪柳白鷺図》、ルソー風の表現が美しい土田麦僊《大原女》、みずみずしい鯖を描いた竹内栖鳳《鯖》、突然の雨に驚く軍鶏を描いた西村五雲《日照雨》、モザイク風の作風が調和した皆川月華《群禽三山》などが印象に残っています。

 

一方、怪しい雰囲気の作品として、釈尊の降魔を描いた入江波光《降魔》、毒婦を描いた甲斐庄楠音《横櫛》、口紅をさす女性を描いた岡本神草《口紅》、日本版サロメを描いた寺松国太郎《サロメ》も見逃せないでしょう。

 

工芸では、琳派的な梅を描き込んだ浅井忠《梅図花生》や大正天皇が昭和天皇に送った、神坂雪佳図案/文台:江馬長閑、重硯箱:神坂祐吉《歌蒔絵文台・重硯箱》が見事でした。他にも、河井寬次郎《白地草花絵扁壺》や河合榮之助《磁器柿花瓶》も絶妙のセンスを感じました。

 

第3部では、青のグラデーションが美しい小野竹喬《海》、文字と色彩が見事に調和した堂本印象《交響》、幻想的な雰囲気のある堂本元次《土匂う里》、赤と黒が美しい下保昭《雲はしる》などが良かったですね。

 

現代美術では、壁から飛び出したシダを表現した今村源《1994-2 ネガシダ》、ガラス玉で鹿を制作した名和晃平《PixCell-Deer #17》なども印象に残りました。

 

京都市京セラ美術館では、現代アート系の展示にもかなり力を入れているようですので、伝統と現代アートがどのように融合していくか楽しみです。尚、開館記念展「京都の美術 250年の夢」第1部~第3部に関しては、その内容が全3冊の図録として販売されていますので、興味のある方はアマゾンなどの通販で購入することもできます。

2020年12月02日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー