【感想】「2020年度 第3回コレクション展」(京都国立近代美術館、会期:2020/10/8~12/20)レビュー

京都国立近代美術館で開催されている「2020年度 第3回コレクション展」(会期:2020年10月8日~12月20日)を鑑賞しました。この展覧会は、「人間国宝 森口邦彦 友禅/デザイン―交差する自由へのまなざし」と同時期に開催されているコレクション展になります。

京都国立近代美術館 2020年度 第3回コレクション展

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

 

・西洋近代美術作品選
・パンリアル美術協会解散によせて
・なぜ芸術家はフランスを目指すのか?
・模様の美
・川勝コレクション 河井寬次郎作品選
・須田国太郎の周辺
・キュレトリアル・スタディズ14:須田国太郎 写実と真理の思索

 

「西洋近代美術作品選」では、スイス出身の画家・美術理論家・教育家であるヨハネス・イッテン(1888-1967)の作品が展示されていました。イッテンは、友禅の森口邦彦氏との関連画家として紹介されています。

 

森口邦彦氏は、フランス国立高等装飾美術学校(ENSAD)留学中にジャン・ウィドマーに師事していますが、ウィドマーがチューリヒ工芸学校で学んでいた時の校長がヨハネス・イッテンでした。

 

ヨハネス・イッテン《ヨハネス・イッテン版画集》は、人体や風景を渦巻き状で表現している不思議な作風でした。時間や運動性を表現しているようです。また、油彩画《幸福な島の町》は、鮮やかな幾何学的抽象画となっています。

 

「パンリアル美術協会解散によせて」では、2020年4月に解散したパンリアル美術協会の作品が取り上げられています。1949年に結成されたパンリアル美術協会は、因習にとらわれた日本画壇の打破を目指していました。

 

ここでの注目は、田中竜児(進)の作品が修復を経て70年ぶりに公開されたことでしょう。田中竜児の作品は、シュルレアリスム風の画風が印象的でした。他にも結成時のメンバーの作品が勢揃いしていました。

 

「なぜ芸術家はフランスを目指すのか?」では、モネ、シスレー、ルノワール、ドガ、ヴュイヤール、ボナール、マティス、モディリアーニ、ピカソ、藤田嗣治といった大御所の作品が展示されていました。基本的にコレクション展では写真撮影が許可されていますが、ピカソを除いて、これらの作品の写真撮影は禁止されていました。これらが寄託作品であるためでしょう。

 

ここでは、榮直入(十五代吉左衛門) の《茶碗 France Loubignac に於いて造る (フランスRAKU茶碗)》なども展示されていました。陶器にもフランスの影響があったのすね。

 

「模様の美」では、表面を絵や図などで彩られた作品が展示されています。ここでは、藤平伸《鳥たちの壺》や河本五郎《白い陶筐》、栗木達介《銀緑彩文陶 壺態II 》、北大路魯山人《織部俎板盤 》といった美しい模様を有した陶器の他、森口華弘の友禅や芹沢鮭介の着物も観ることができました。

 

「川勝コレクション 河井寬次郎作品選」では、河井寬次郎作品のパブリック・コレクションとして有名な川勝コレクションから選ばれた作品が展示されていました。やはり、見事な作品群です。河井寬次郎の作品は、造形美だけでなくその色彩感覚が絵画的でもありますので、絵画好きな方にもその魅力が伝わると思います。

 

「須田国太郎の周辺」では、須田国太郎にまつわる画家たちの作品が展示されていました。そして、「キュレトリアル・スタディズ14:須田国太郎 写実と真理の思索」では、チラシやパンフレットも配布されていました。パンフレットには、須田国太郎の全展示作品(前期分 + 後期分)が掲載されていますので貴重な簡易図録になっています。

2020年12月04日|ブログのカテゴリー:2020年投稿, 展覧会レビュー