【感想】「至高の小磯良平 大野コレクションのすべて」(神戸市立小磯記念美術館、会期:2020/12/24~2021/3/21)レビュー

神戸市立小磯記念美術館で開催されている「至高の小磯良平 大野コレクションのすべて」(会期:2020年12月24日~2021年3月21日)に行ってきました。この展覧会は、株式会社大野石油店の現会長・大野輝夫氏の小磯良平コレクションから構成されています。

神戸市立小磯記念美術館至高の小磯良平 大野コレクションのすべて

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 様式の確立と戦争の時代 1938~45年
第2章 あらたな可能性をもとめて-古典と抽象- 1945~70年
第3章 伝統につらなる-赤坂離宮壁画- 1970~75年
第4章 写実の洗練と簡潔をめざして 1975~88年

 

展覧会の冒頭に、大野コレクションの出発点となったリトグラフ作品《裸婦》が展示されていましたが、流石の1枚でした。温かみのある魅力的な裸婦像になっています。

 

第1章では、小磯良平にしては珍しく、屋外のベンチに座る女性を背景の庭と共に描いた作品《婦人像》が展示されていました。印象派風の作品で、女性の優しい雰囲気が背景の緑と一体化しています。

 

第2章では、今回楽しみにしていた《D嬢の像》が展示されていました。これは、小磯の知人の少女を描いたとされる作品で、少女の魅力が遺憾なく表現されていて、特に前髪の描き方が絶妙でした。背景は、荒く大雑把に描かれ、それが返って少女の生命感を際立たせていました。

 

第3章では、《白川女》と題する二つの作品が印象的でした。1968年に制作された作品は、白川女の格好をしたモデル(花は載せていない)が座っている様子を家具類と共に描いていますが、その若い女性の感情が見るものに伝わってくるようで、思わず笑みが漏れてしまいます。

 

一方、1972年に制作された《白川女》の方は、人物の部分だけを取り出して描かれていますが、女性の優しい佇まいと、白い作業着が見事に調和しています。他にも、迎賓館赤坂離宮壁画用のエスキース(下絵)が展示されていましたが、エスキースならではの魅力があり、小磯良平のデッサン力の高さが窺えました。

 

第4章では、《描く婦人》や《リュートを持つ婦人》といった小磯良平の代表作が、そのエスキースと共に展示されていました。様々な試行錯誤を繰り返しながら、作品が完成していく様子が窺えます。

 

今回の展覧会では、新たな小磯良平の一面に出会えた気持ちになりました。平日の鑑賞でしたが、会期が終わりに近いせいもあって、来館者は結構おられました。図録は1,300円で販売されていましたので、興味をもたれた方はお求めください。

2021年03月19日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー