【感想】「絵でよむ百人一首と源氏物語」(嵯峨嵐山文華館、会期:2021/3/1~4/10)レビュー

嵯峨嵐山文華館で開催されている「絵でよむ百人一首と源氏物語」(会期:2021年3月1日~4月10日)に行ってきました。この展覧会では、百人一首の題材となった情景を描いているかのように思える作品や源氏物語に関係する作品が展示されています。

嵯峨嵐山文華館絵でよむ百人一首と源氏物語

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 絵でよむ百人一首
第2章 源氏物語の世界

 

そもそも嵯峨嵐山文華館は、この地で誕生したと伝えられる百人一首の歴史やその魅力を伝えることを目的としたミュージアムですが、今回の展覧会はまさにそうした展示内容になっています。

 

1章では、まるで百人一首の歌の題材として描かれたかのような作品が展示されていました。横山大観の《霊峰春色》から始まり、この作品には、山部赤人「田子の浦にうち出でてみれば白妙の 富士の高嶺に雪はふりつつ」が添えられていました。

 

個人的に特に気に入った作品は、速水御舟《雨中の桜》でした。この作品には、前大僧正行尊「もろともにあはれと思へ山ざくら 花よりほかに知る人もなし」が添えられていました。速水御舟は、雨が降りしきる中、山桜が力強く咲いている様子を描いています。雨の中でひときわ輝く山桜が印象的です。

 

さらに、長沢芦雪《朧月紅葉図》も良いですね。この作品には、大江千里「月見ればちぢに物こそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあられど」が添えられていました。散りかけの紅葉の木とおぼろ月とを重ね合わせた構図が見事です。

 

第2章では、紫式部が記した「源氏物語」に関係する作品が展示されていました。今から約400年前の作品となる、狩野山楽《源氏物語図押絵貼屏風》を眺めながら、「源氏物語」という世界最古とされる女流文学作品の重みを感じました。

 

また、源氏物語の各場面を登場人物抜きで描き、特徴的な背景や持ち物だけで観るものに連想させる「留守模様」と呼ばれる表現方法で描いた、玉圓永信《源氏五十四帖図》も興味深いですね。

 

そして、最後は円山応挙の《源氏物語図屏風》でした。この作品は、円山応挙の「夏雲時代」と呼ばれる、20代~30代頃に制作した作品だそうです。金屏風を用いた作品で、タイムマシンで当時の様子を垣間見ているような情景を描いた作品になっていました。

2021年03月30日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー