【感想】「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ」(神戸ゆかりの美術館、会期:2021/4/24~7/18)レビュー

神戸ゆかりの美術館で開催されている「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ」(会期:2021年4月24日~7月18日)に行ってきました。この展覧会では、江戸時代の戯画から、明治・大正・昭和終戦期までの漫画の流れを、様々な作品や資料を通して概観できるようになっています。

GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へGIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 商品としての量産漫画の誕生
第2章 職業漫画家の誕生 ~ポンチ・漫画の時代へ~
第3章 ストーリー漫画の台頭 ~昭和初期から終戦まで~

 

江戸時代初期までの戯画は、貴族などの上流階級から注文を受けて絵師たちが制作していた肉筆画がその中心でした。ところが、江戸時代中期頃から、印刷出版が拡がり、庶民にも戯画が人気となります。第1章では、こうした江戸中期から幕末までに流行った「江戸戯画」が紹介されています。

 

まずは、京都で生まれた「鳥羽絵」が大阪の版元から全国に拡がります。これは、手足が長くて躍動感のある人物を描いた木版刷りの楽しい戯画ですね。他にも、文字絵や影絵、だまし絵などの遊び絵も紹介されていますが、実に面白いです。

 

さらに、漫画の源流とも言える「北斎漫画」も紹介されています。今回は、冊子の状態での展示ですので、少し観にくいですが、少し前に観た「北斎漫画」展を思い出しながら鑑賞しました。また、江戸時代後期に活躍した歌川国芳の風刺画も炸裂していました。

 

他にも、吹き出しやコマ、光線の表現、浮絵と呼ばれる遠近法など、江戸戯画で多用された表現方法も紹介されていました。河鍋暁斎がことわざを戯画化した《暁斎百図》も実に楽しいですね。

 

第2章では、明治から大正時代の漫画の流れを紹介していました。明治時代になりますと、風刺画のことを洋風に「ポンチ」と呼ぶようになり、かなり流行したようです。この流れの延長線上に、今泉一瓢や北沢楽天らによって名付けられた「漫画」という言葉が生まれてきます。

 

第3章では、昭和初期に流行った漫画雑誌やナンセンス漫画が紹介されています。戦中戦後では、岡本一平や田河水泡なども登場します。ちなみに、今回の展覧会では、京都精華大学国際マンガ研究センターと京都国際マンガミュージアムが所蔵している作品と資料が、前・後期合わせて約320点閲覧できる機会となっています。

 

ただ、展示点数が多い分、最初から丁寧に鑑賞しすぎますと、最後の方で息切れしてしまう可能性がありますのでご注意ください。尚、第2章の途中までは写真撮影が可能となっています。今回は、専用のグッズコーナーも設置されており、図録も販売されていました。

2021年06月11日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー