京都市京セラ美術館で開催されている「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」(会期:2021年4月17日~6月27日)に行ってきました。
国立ベルリン・エジプト博物館は、世界有数のエジプト・コレクションを所蔵していますが、特にアマルナ時代のコレクションが優れているようです。今回の展覧会は、サブタイトルに示されている通り、創造神話にまつわる思想性の高い展覧会になっています。
古代エジプト展は日本でも人気の高い展覧会の一つですが、この展覧会も例外ではなく、連日賑わっているようです。私は、臨時開館となった月曜日に行きましたが、基本的に予約制となっていますのでそれなりに快適に鑑賞することができました。
ただ、この展覧会は写真撮影が可能ですので、その影響による流れの悪さがありました。展示作品を後でゆっくり振り返りたいのであれば、詳細な図録が販売されていますのでそちらの購入をお勧めします。小さな展示品もそこそこありましたので、それらは図録のほうが分かりやすくて充実しています。また、音声ガイドは展示品から少し離れた位置に立って落ち着いて聞いたほうがよく理解できると思います。
展覧会の構成は以下のとおりです。
第1章 天地創造と神々の世界
第2章 ファラオと宇宙の秩序
第3章 死後の審判
第1章では、イシス女神とその息子であるホルス神との関係性が、キリスト教における聖母マリアとイエスの関係に似ているところに不思議な感覚を覚えました。また、古代エジプトでは、人間を超えた能力を持つ動物たちに対して抱いていた、畏れや尊崇の思いがかなり強かった様子が窺えました。
第2章では、グロテスクな姿が印象的な《創造の卵を持つスカラベとして表現された原初の神プタハ》や、純粋な芸術作品として観ても美しい《ネフェルティティ王妃あるいは王女の頭部》といった出土品も展示されており必見です。
第3章では、ミイラマスクや人型棺、死者の書など、死後の審判に関する出土品が展示されていました。びっちりと書き込まれた《タレメチュエンバステトの「死者の書」》も展示されていました。
この展覧会では、アニメーションによる解説動画も上映されており、いろいろと工夫されていました。ただ、エジプトの創造神話をある程度知った上で鑑賞するのと、まったく知らずに鑑賞するのとではかなり満足度が異なるように感じました。
ですので、展覧会の公式ホームページに掲載されている解説を事前に読んでおくか、この展覧会の監修者である早稲田大学文学学術院の近藤二郎教授による記念講演会の動画を見ておくとより充実した鑑賞が楽しめると思います。
約130点の展示品のうち、《タレメチュエンバステトの『死者の書』》や《タイレトカプの人型木棺(外棺)》など100点以上が日本初公開となっていますので貴重な機会となるでしょう。
この展覧会は巡回展で、江戸東京博物館(会期:2020年11月21日~2021年4月4日)、京都市京セラ美術館(会期:2021年4月17日~6月27日)に続き、静岡県立美術館(2021年7月10日~9月5日)、東京富士美術館(会期:2021年9月19日~12月5日)でも開催される予定です。