【感想】「開館25周年記念 館蔵品展 中国現代花鳥画の世界 -斉白石に導かれたひとたち- 併催 安田一族の水墨画展」(丹波市立植野記念美術館、2019/6/1~6/30)レビュー

兵庫県丹波市に位置する丹波市立植野記念美術館の「開館25周年記念 館蔵品展 中国現代花鳥画の世界 -斉白石に導かれたひとたち- 併催 安田一族の水墨画展」(会期:2019年6月1日~6月30日)に行ってきました。植野記念美術館は、丹波市出身の実業家だった植野藤次郎のコレクションを収蔵する美術館で、豪華な建物は財団法人植野アジア芸術文化振興財団から寄贈されています。

丹波市立植野記念美術館

 

今回の「館蔵品展」では、植野記念美術館が誇る中国絵画コレクションのなかから花鳥画を中心に、中国近代伝統的絵画のなかで最後の文人画家として活躍した斉白石(せい はくせき)を中心に、彼を取り巻く画人たちの作品が展示されています。また、併催として旧氷上郡において近代水墨画壇の本流にあった安田一族の水墨画も紹介されています。

 

展覧会の構成は、作家別に作品が展示されていました。

 

<中国現代花鳥画の世界>

斉良遅(1921年~2003年:白石の第四子)5作品
斉白石(1864年~1957年)5作品
王雪濤(1903年~1982年:白石に師事)5作品
呉作人(1908年~1997年:白石と親交)1作品
娄師白(1918年~2010年:白石に師事)10作品
斉良巳(1923年~1988年:白石の第五子)14作品
許麟盧(1916年~2011年:白石に師事)9作品

 

<安田一族の水墨画展>

安田鴨波(1863年~1929年)4作品
安田栗郷(1892年~1972年:鴨波の長子)1作品
安田半畊(1869年~1938年:鴨波の弟)3作品
安田雲林(1895年~1964年:鴨波の次男)2作品
安田虚心(1923年~2009年:栗郷の長男)16作品

 

中国の現代花鳥画では、エビやオシドリ、蜂などが描かれており、特にエビと蜂の描き方が秀逸でした。一方、オシドリに関しては、漫画的な表現になっており、若干ギャップを感じました。

 

斉白石と呉作人に関しては、シンプルな表現が追求されており熟練の技を感じました。印象的な作品としては、斉白石「墨蝦図」、王雪濤「奇石蘭芝図」、呉作人「金魚」、娄師白「藤花飛蜂」、斉良巳「朝顔螽斯」などがありました。

 

安田鴨波の屏風作品では、向かって右から奇数面のみ薄く菜色されていましたが、何か理由があるのでしょうか? 安田一族の水墨画に関しては、特に、安田虚心の「颯々」「雨霽」「潺々」などの作品を観ていると、もはや水墨画の域を超えているように感じました。水墨画もどんどん進化しているようです。

 

植野記念美術館では、展示スペースの関係から現在のところ常設展示はされていないようなので、今回は館蔵品を鑑賞できる貴重な機会となりました。中国絵画に興味のある方は、機会を見つけて鑑賞されると良いと思います。美術館の建物自体も外壁・内壁とも総花崗岩という豪華さで、伝統ある美術館の雰囲気が満喫できます。

 

2019年06月20日