あべのハルカス美術館で開催されている「ポーラ美術館コレクション展 モネ、ルノワールからピカソ、シャガールまで」(会期:2021年7月9日~9月5日)に行ってきました。この展覧会では、箱根にあるポーラ美術館が所蔵する西洋絵画コレクションから74点の絵画と化粧道具などが展示されています。
最近は、コロナ禍の影響で海外美術館が所有する作品を観る機会がめっきり減ってしまいましたが、一方で、国内美術館が所有している貴重な作品を鑑賞できる機会は逆に増えています。
今回の展覧会も関西在住の美術ファンにとっては、ありがたい企画展になりました。コロナ禍の状況で、神奈川県の箱根まで足を運ぶのはなかなか大変ですが、向こうから作品がやってくるわけですから実に助かります。ということで、久しぶりに西洋絵画が楽しめました。
展覧会の構成は以下のとおりです。
1 都市と自然 ―モネ、ルノワールと印象派
2 日常の輝き ―セザンヌ、ゴッホとポスト印象派
3 新しさを求めて ―マティス、ピカソと20世紀の画家たち
4 芸術の都 ―ユトリロ、シャガールとエコール・ド・パリ
1章「都市と自然」では、フランスで近代化が進んだ19世紀後半に活躍した、モネやルノワール、ピサロ、シスレーといった、印象派を代表する画家の作品が展示されています。展覧会は、モネの《睡蓮》から始まりますが、他に、蒸気機関車を描いた《サン=ラザール駅の線路》もありました。蒸気の表現が実に見事です。
更に、ルノワールの《髪かざり》《レースの帽子の少女》《エッソワの風景、早朝》など、圧巻の作品が続きます。幻想的で吸い込まれそうになる明るい色使いは、ルノワールならではの才能で圧倒されてしまいます。
2章「日常の輝き」では、印象派の筆触分割に変わる新たな試みに挑戦したポスト印象派と呼ばれる、セザンヌやゴーガン、ゴッホ、シニャック、ボナールたちの作品が並びます。
ここでは、セザンヌの作品に心惹かれました。一方で、ゴッホの《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》の色彩感覚には驚かされました。様々な色彩効果を試していた時期の作品のようですが、現実にはあり得ないような色彩の情景を描いています。しかし、そこがまた魅力的でもあります。
3章「新しさを求めて 」では、フォービスムと呼ばれるヴラマンクやマティス、キュビスムを追求したブラックやピカソなどが登場します。
ここでは、現実の色彩を無視して自由に描いたヴラマンクの《シャトゥー》や、実際の色彩に合わせながらもフォーブの精神を忘れない《湖》という作品など、実に楽しい気分にしてくれる作品に出会えました。他にも、色彩豊かなピカソの作品も心惹かれました。
4章「芸術の都 」では、エコール・ド・パリと呼ばれる一群の画家たちの作品が登場します。ユトリロやモディリアーニ、パスキン、マリー・ローランサン、ドンゲン、キスリング、シャガールといった有名どころの画家たちの作品が展覧会の最後を飾ります。
シャガールの《私と村》は、ポーラ美術館が所蔵していたんですね。懐かしい友人に出会えたような気分がしました。ちなみに、来年の春にオープンする大阪中之島美術館の開館記念特別展が「モディリアーニ展」に決まりました。かつて、名古屋市美術館のコレクション展でモディリアーニの《おさげ髪の少女》に出会ったとき、思わず「こんなところにいたのか」と心の中で叫んでしまったことがありましたが、どうやら大阪で再会できそうです。こうした気持ちになれる作品が全国にありますと、なんだか嬉しくなりますね。
尚、この展覧会は巡回展で、この後、東京のBunkamura ザ・ミュージアムで2021年9月18日から11月23日までの予定で開催されます。音声ガイドや公式図録も用意されています。
展覧会情報
会場:あべのハルカス美術館
会期:2021年7月9日(金)~ 9月5日(日)
休館日:会期末まで無休
観覧料:一般1,500円
割引:大阪市立美術館「揚州八怪」、大阪歴史博物館「あやしい絵展」と相互割引あり
音声ガイド:600円(声優・下野紘)
写真撮影:1点のみ可能
図録:2,400円
Web:あべのハルカス美術館「ポーラ美術館コレクション展」