京都市京セラ美術館で開催されている「フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家」(会期:2021年7月10日~9月5日)に行ってきました。この展覧会は、日本て初めてとなるフランスの彫刻家フランソワ・ポンポン(1855-1933)の回顧展となります。
フランソワ・ポンポンの作品を目にするのは今回が初めてでした。有名になるきっかけとなった《シロクマ》の写真はどこかで観たような気もしますが・・・・・・。
展覧会の構成は以下のとおりです。
Ⅰ 彫刻家としての歩み -人物像での成功を目指して
Ⅱ 動物彫刻の誕生とその背景
Ⅲ ポンポンの活躍と評価
Ⅳ モデルへの温かなまなざし -彫刻に捧げた人生
1章「彫刻家としての歩み」では、人物像で彫刻家として身を立てようとしていたポンポンの初期の作品が展示されていました。キリスト教の殉教聖女《サント・カトリーヌ》やレ・ミゼラブルに登場する貧しい少女《コゼット》など、見事な作品を制作していると思いますが、人物像ではなかなか認められなかったようです。
やはり、どれだけ技術的に優れていたとしても、自分にしか彫れない作品を作らないと注目されることは難しいようです。この時期、ポンポンは憧れていたロダンのアトリエで下彫りなどの仕事をしながら技術を磨いていたようです。
2章「動物彫刻の誕生とその背景」では、動物彫刻家への道を歩み始めたポンポンが制作した様々な動物彫刻が展示されていました。初期の試行錯誤が感じられる作品から、ポンポン作品の特徴となる、無駄を省いた“なめらかな動物彫刻”に至る過程を感じることができました。
ここでは、現実の動物の姿から、美のフォルム成分を取り出したような作品を観ることができます。ポンポンは、ある朝、ガチョウの美しい輪郭線を観たことをきっかけに、“なめらかな動物彫刻”という制作の方向性が固まったようです。
3章「ポンポンの活躍と評価」では、67歳になったポンポンを一躍有名にした作品《シロクマ》が登場します。ただし、サロン・ドートンヌに出品された、長さ2.5mの大型作品がここに展示されているわけではありません。ここでは、小型の《シロクマ》が展示されています。さらに、シロクマ以外にも、美しいフォルムを有する様々な動物たちが鑑賞者を出迎えてくれます。
4章「モデルへの温かなまなざし」は、《シロクマ》をきっかけに一躍有名になったポンポンですが、身近な人々や動物たちへの愛情は変わらず、そうした対象を彫刻作品として残している様子が窺える展示内容でした。最後に、ポンポンの紹介映像も上映されていました。
多くの芸術家たちの仕事を観ていますと、若い頃は極めて写実的で精巧な作品を手がけながら、やがて、年を重ねるにつれ、無駄を省き美の抽象化を辿る作家が多いようです。ポンポンの場合は、対象の原形を残しつつ、フォルムの抽象化を試みた彫刻家だと言えるでしょう。
この展覧会は、この後、名古屋市美術館、群馬県立館林美術館、佐倉市立美術館、山梨県立美術館を巡回する予定です。特に、配付資料としての作品リストはありませんでしたが、小型の図録が販売されていました。
展覧会情報
会場:京都市京セラ美術館
会期:2021年7月10日(土)~ 9月5日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
観覧料:一般1,800円
割引:有料観覧券(当日分に限る)で「コレクションルーム夏期」の観覧料が100円引き
音声ガイド:600円(女優・常盤貴子)
写真撮影:2点のみ可能
図録:2,100円
Web:京都市京セラ美術館「フランソワ・ポンポン展」
Web:「フランソワ・ポンポン展」公式サイト