京都国立近代美術館で開催されている「2021年度 第2回コレクション展」(会期:2021年6月24日~8月29日)に行ってきました。今回は、展示エリアの一部が「モダンクラフトクロニクル」に浸食されていますので、純粋な「コレクション展」の展示点数としては少なくなっています。
展覧会の構成は以下のとおりです。
西洋近代美術作品選
あやしげな絵(前期展示)
いきものの絵(後期展示)
長谷川潔の版画
里見勝蔵と渡仏画家たち
「西洋近代美術作品選」では、京都国立近代美術館が2020年度に新たに収蔵した2作品とそれに関連する作品が展示されています。一つ目は、色の対比や様々な形を組み合わせることで豊かな表現が生まれるという“同時性”を追求した、現ウクライナ生まれのソニア・ドロー=テルクの《リズム》です。心地よい色彩と図形の組み合わせになっています。
もう一つは、アルメニア生まれのアーシル・ゴーキーの《バースデイ・グリーティング》です。これは、ロシア未来派のダヴィト・ブルリュークの誕生日に彼に送ったというカードです。遊び心に満ちた作品であると同時に、どこか複雑な思考を感じさせられます。
一方、ここではブルリュークの《ジプシーの女》も展示されていました。3人の女性がお尻を前に向けつつ、体をよじって前を向くという不思議な構図で、黄色系の色彩が不思議な魅力を放っている作品です。
次は「いきものの絵」です。私は後期展示を鑑賞しましたので、「あやしげな絵」の方は観られませんでした。こちらは、大阪歴史博物館で開催されている「あやしい絵展」との連動企画だったようですね。
「いきものの絵」では、人々の生活と深く関係するいきものを描いた作品が展示されています。ここでは、生き物の種類も多種多様で、その画風も個性に満ちた作品が並んでいました。改めて、美術館が所蔵する作品の豊富さを思い知らされる内容でした。
長谷川潔はフランスを拠点に活躍した版画家ですが、今回の展示では、初期の木版画や油彩画も展示されていました。不思議な世界観を持った作品が多いですね。花瓶の花を描いた油彩画を見ていますと、色彩が豊かでどこか幻想的な気持ちになってきます。村を描いた風景画にしても、どこか異世界を眺めているような気持ちになります。
「里見勝蔵と渡仏画家たち」では、ヴラマンクに師事しフォービスムを追求した里見勝蔵と、同時期に渡仏した画家たちの作品が展示されていました。里見勝蔵という方は知らなかったのですが、なぜか惹かれるものを感じましたが、それもそのはずで、私の好きなフォービスムの画家でした。
コレクション展と言いつつ、流石の内容でした。日本では、派手な企画展や特別展がもてはやされがちですが、美術館の個性が出やすいコレクション展を鑑賞者が軽んじるのは勿体ないですね。今日は、どんな新しいお気に入り作品に出会えるだろうかと思いながら、美術館を巡るのも楽しいものです。
展覧会情報
会場:京都国立近代美術館
会期:2021年6月24日(木)~ 8月29(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
観覧料:一般430円
割引:「モダンクラフトクロニクル」の観覧料金でコレクション展も観覧可能
音声ガイド:無料(スマホアプリ利用)
写真撮影:一部の作品を除きOK
図録:なし(京都国立近代美術館 所蔵作品目録を参照)
Web:京都国立近代美術館「2021年度 第2回コレクション展」