【感想】「日本の心象 刀剣、風韻、そして海景」(姫路市立美術館、会期:2021/7/3~9/5)レビュー

姫路市立美術館で開催されている「日本の心象 刀剣、風韻、そして海景」(会期:2021年7月3日~9月5日)に行ってきました。この展覧会では、日本の美意識を象徴するものとして“刀剣”の刃文に注目し、それらの解説と共に国内の名刀が展示されています。さらに、明珍兄弟による、音(玉鋼火箸)と光彩(刀剣)のインスタレーションや杉本博司氏の「海景」シリーズが展示されています。

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

第1章 刀剣の光陰
第2章 風韻、そして海景
第3章 玉鋼の響

 

第1章では、平安時代から現代に至る様々な刀剣が展示されていました。各々の時代に特徴があることがよく分かります。刀匠の個性が表れた刀剣の刃文を通して、日本の美を味わえるように工夫された展示で、随所にパネル解説もありました。

 

武器としての刀剣だけでなく、宝物や儀式、美術品としての役割も担っていた刀剣の姿を垣間見ることができました。専門用語も多く、にわかにその価値を十分理解することが難しい刀剣の世界ですが、水の流れのなかに花が浮かぶような刃文や菊の家紋を表現した刃文など、視覚的に分かりやすいものもありました。

 

第2章は、現代の刀匠と鍛冶師である明珍兄弟による刀剣と玉鋼火箸によるインスタレーションや、杉本博司氏による写真作品「海景」シリーズが展示されていました。ここでは写真撮影が可能でした。

 

杉本博司氏の「海景」シリーズでは、世界の海や湖の境界線をクローズアップした写真が並んでいました。これらの作品は、海景を通して個人史と人類史との融合を読み解こうとする杉本氏が提示する“禅”の公案テーマのようにも思えました。

 

第3章は、美術館の庭園で展開しているアートプロジェクトです。その本来の魅力を実感するには、夜が最も相応しいと思いますが、残念ながら私が行ったのは真っ昼間でした。ここは無料エリアですので、お近くの方は夜に行かれると存分に楽しめると思います。

 

スマートフォンで下記の音楽を再生しながら、庭園内を歩くと前庭の音楽に同化するようになっています。このインスタレーションは、「玉鋼の中に入り込んでしまう」という発想で作曲された菅野由弘氏による「星雲光響2021」と「たまはがねの響」の世界観を視覚的に表現した光とがコラボレーションするように工夫されています。

展覧会情報

展覧会名:日本の心象 刀剣、風韻、そして海景
会場:姫路市立美術館
会期:2021年7月3日(土)~ 9月5日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
観覧料:一般1,200円
割引:同展入場券で常設展示室も観覧可能
音声ガイド:なし
写真撮影:一部可能
図録:3,000円
Web:姫路市立美術館「日本の心象 刀剣、風韻、そして海景」
2021年08月13日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー