【感想】「唱歌!西洋音楽がやって来た―明治の音楽と社会―」(兵庫県立歴史博物館、会期:2021/7/17~9/5)レビュー

兵庫県立歴史博物館で開催されている「唱歌!西洋音楽がやって来た―明治の音楽と社会―」(会期:2021年7月17日~9月5日)に行ってきました。この展覧会では、幕末における西洋音楽との出会いに始まり、明治期における西洋音楽の導入、及びその影響について、唱歌を中心に紹介されています。

兵庫県立歴史博物館「唱歌!西洋音楽がやって来た―明治の音楽と社会―」兵庫県立歴史博物館「唱歌!西洋音楽がやって来た―明治の音楽と社会―」

 

展覧会の構成は以下のとおりです。

1 幕末ドラムマーチ
2 唱歌の誕生
3 子どもの言葉の唱歌
4 軍歌と鉄道唱歌
5 音楽を楽しむ

 

今回は、美術展ではありませんので絵画や美術作品を楽しむというより、唱歌を中心に幕末から明治期にかけての西洋音楽の導入についての歴史を学ぶことになりました。

 

第1章では、日本に洋楽が導入された幕末の様子が紹介されていました。洋楽の導入につながるきっかけの一つとなったのが、海防のための西洋式軍制だと言いますから音楽にも軍事が深く関係していたことがよく分かります。

 

ここでは、歌川芳藤《調練歩行の図》や歌川芳員《散兵太鼓譜附双六》などが展示されていました。

 

第2章では、唱歌の誕生に関する資料が展示されていました。西洋音楽の導入には、軍隊伝習だけでなく、キリスト教の伝道や明治期の式部寮伶人(宮中で雅楽を演奏する人)、教育者の影響が大きかったようです。

 

最初は、西洋音楽に日本語の歌詞をあてがって歌っていたようです。そして、1881年に音楽教科書『小学唱歌集』が誕生します。ここでは、歌川広重《小学唱歌図解》や文部省音楽取調掛『小学唱歌集』などが展示されていました。

 

さて、こうして登場した『小学唱歌集』でしたが、その内容に批判が出てきます。というのも、歌詞の内容が難解で、さらに子どもたちの心情に合わない曲調だと言うわけです。

 

第3章では、こうして生まれた「子どもの言葉の唱歌」に焦点が当てられています。1900年に子どもの日常語を用いた唱歌集『教科適用 幼年唱歌』が刊行されます。他に、滝廉太郎『幼稚園唱歌』なども出版されています。

 

第4章では、軍歌や鉄道唱歌が登場します。こうした唱歌の歌詞を通して、歴史や地理、道徳などが学べるようになっていました。唱歌は娯楽であると同時に、教養を身につけるための役割も大きかったようです。

 

第5章では、紙腔琴(しこうきん)という自動演奏装置も展示されていました。これは、ハンドルを回すとロール状に巻かれた楽譜の曲を奏でてくれる装置です。最後に、当時のレコードの音を聴くことができるコーナーも設置されていました。

 

兵庫県立歴史博物館は、この展覧会以後、施設・設備の大規模改修がなされる予定で、2023年3月末まで休館となります。リニューアルオープンまで、今しばらくのお別れとなります。

展覧会情報

展覧会名:唱歌!西洋音楽がやって来た
会場:兵庫県立歴史博物館
会期:2021年7月17日(土)~ 9月5日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
観覧料:500円
音声ガイド:無料アプリ(ポケット学芸員)
写真撮影:一部可能
図録:無料ガイドブックあり
Web:兵庫県立歴史博物館「唱歌!西洋音楽がやって来た」
2021年08月29日|ブログのカテゴリー:2021年投稿, 展覧会レビュー