京都文化博物館で開催されている「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌(レクイエム)」(会期:2021年8月7日~9月26日)に行ってきました。この展覧会は、大正期から昭和期にかけて京都を中心に活躍した小早川秋聲(こばやかわ しゅうせい、1885-1974)の本格的な回顧展となります。
展覧会の構成は以下のとおりです。
第1章 はじまり-京都での修業時代
第2章 旅する画家-異文化との出会い
第3章 従軍画家として-《國之楯》へと至る道
第4章 戦後を生きる-静寂の日々
小早川秋聲は、中学卒業後、歴史画を得意とした谷口香嶠(たにぐち こうきょう)に学んでいます。谷口香嶠は、幸野楳嶺門下の四天王と呼ばれたうちの一人ですね。ちなみに四天王とは、菊池芳文、竹内栖鳳、都路華香、谷口香嶠の4名のことを指します。
第1章では、谷口香嶠に学んだ時代に制作した作品が展示されています。《小督》《譽之的》《楠公父子》など、時代考証に基づいた見事な作品でした。絵画技術は既に相当のレベルにあったことがわかります。
谷口香嶠の死後、小早川秋聲は山元春挙に学びます。山元春挙は写生をもとにした風景画を得意とする京都画壇の代表的画家です。そして、山元春挙が主催する画塾・早苗会に入会し、写生旅行を楽しみます。
第2章では、日本のみならず世界を写生旅行して回った小早川秋聲の風景画が展示されていました。その脱力した画風と心地よい色彩が実に感動的に調和した作品群でした。本人が旅行を楽しむだけでなく、後生の人々にもその喜びを味わわせてくれているんだ、と思わず感謝の思いがわき上がってきました。
第3章では、小早川秋聲の作品で最も有名な《國之楯》を始め、戦争画の数々が展示されていました。小早川秋聲の戦争画は、戦意を高揚する作品と言うより、兵士たちの心を代弁しているかのような作品でした。陸軍将校の遺体を描いた《國之楯》が、陸軍に受取を拒否されたという事実が、小早川秋聲の画風を物語っているでしょう。
第4章は、戦後に描いた作品が展示されていました。ここでは、仏画や仙人を描いた晩年の作品を見ることができます。
小早川秋聲はその死後、しばらく忘れられた存在になっていましたが、近年、再評価されるようになっています。そうした意味でも記念碑的な展覧会と言えるでしょう。尚、この展覧会は、この後、東京ステーションギャラリー(10/9-11/28)、鳥取県立博物館(2022/2/11-3/21)と巡回する予定になっています。
音声ガイドは、持ち帰り可能なイヤホンを利用したタイプでした。図録は、展示会場だけでなく、一般書店でも購入できますのでご希望の方はお買い求めください。
⇒ 公式図録 (PR)
展覧会情報
会場:京都文化博物館
会期:2021年8月7日(土)~ 9月26日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
観覧料:1,400円
音声ガイド:600円(佐賀龍彦)
写真撮影:不可
図録:2,640円
Web:京都文化博物館「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」