兵庫県立美術館で開催されている「2021年コレクション展Ⅱ」(会期:2021年7月17日~12月26日)を鑑賞しました。
今回のコレクション展【前期】は、特集「なぜここにいるの -伊藤文化財団寄贈作品・新収蔵品を中心に」(会期:2021年7月17日~12月26日)、小企画「美術の中のかたち―手で見る造型 東影智裕展―触知の森」(会期:2021年7月17日~9月26日)、「近現代の彫刻」、「近代の日本画・洋画」、小磯良平記念室、金山平三記念室(以上、会期:2021年7月17日~12月26日)からなります。
特集「なぜここにいるの」の構成は以下のとおりです。
1 ここにいる人、いない人。
1-1.巨匠を間近に
1-2.ひょうごの美術館だから。
1-3.時代を共に生きる
2 伊藤文化財団40年の寄贈作品
2-1.長きご縁があってこそ
2-2.歴史を語る名品
3 作品たちの数奇な人生
「ここにいる人、いない人。」では、“この美術館にいる人といない人”との分かれ目に注目し、当館の収集方針が紹介されていました。一つ目は、値段が安くて美術の流れがわかる彫刻や版画の収集(一点豪華主義の逆)です。
ここでは、ゴヤ、マネ、ピサロ、ルドン、カンディンスキー、ウォーホル、ピカソ、ロダン、ミロ、マグリット、ヘイターといった巨匠たちの作品が楽しめました。
収集方針の二つ目は、日本の近代美術や兵庫県ゆかりの作家の作品収集です。
ここでは、神中糸子、浅原清隆、網谷義郎、鴨居玲、横尾忠則、今竹七郎が登場します。網谷義郎は新収蔵品が2点ありました。今竹七郎はメンソレータムの看護師マークや輪ゴムの茶色と黄色の箱をデザインした方ですね。
そして、収集方針の三つ目は、山村徳太郎(1926-1986)が自分と同時代を生きる作家たちの作品を集めた“山村コレクション”です。県美にとって非常に重要なコレクションとなっています。
ここでは、吉村益信、田中敦子、山崎つる子、浮田要三、元永定正、白髪一雄、松井紫朗の作品が並びます。
次に、伊藤文化財団から寄贈された作品群が紹介されていました。同財団は1981年に設立され、今日に至る40年間で951点が同館に寄贈されているそうです。
ここでは、新収蔵品として、抽象絵画の先駆者・長谷川三郎の作品2点、具体美術協会を設立した吉原治郎の作品2点も展示されていました。
また、本多綿吉郎や和田三造、岸田劉生、安井曾太郎、小磯良平、佐伯祐三たちの名作も展示されていました。
特集の最後は、美術館にやってくる前に、数奇な人生(画生?)を歩んだ作品が紹介されています。ここでは、木下晋、鈴木清一、北村四海、ロシアの作家・ブルリュークとパリモフの作品が並んでいました。
小企画「美術の中のかたち―手で見る造型 東影智裕展―触知の森」は、県美恒例の触って作品を鑑賞できる企画で、前期のみの開催となります。今回は、東影智裕さんのリアルな動物作品に触れることができました。
事前に手荷物を受付に預けて、手袋をはめて準備完了です。幾つかの注意点を確認してから、作品鑑賞に移ります。まるで生きている動物のような雰囲気がある作品ですが、意外と表面は固く重量も結構ありました。
さらに、2階のコレクション展には、小磯良平記念室と金山平三記念室があり、近代の日本画・洋画を集めた展示室もありました。ここでは、村上華岳や橋本関雪らの日本画も展示されていました。
いつもながらの充実した展示内容で、企画展と比べても圧倒的に鑑賞者が少ないので、写真を撮りながら存分に楽しめました。海外美術館のように日本でも常設展示が人気となる日がやって来るのでしょうか? 最近は、コロナ禍の影響もあって、各地の国内美術館のコレクションを近くの美術館で楽しめる機会も増えて、悪いことばかりではありませんね。
展覧会情報
会場:兵庫県立美術館
会期:2021年7月17日(土)~12月26日(日)
休館日:月曜日(8/9,9/20開館、8/10、9/21休館、9/27-10/8閉室)
観覧料:500円
音声ガイド:なし
写真撮影:一部を除き可能
図録:なし
Web:兵庫県立美術館「2021年コレクション展Ⅱ」