京都国立近代美術館で開催されている「発見された日本の風景 美しかりし明治への旅」(会期:2021年9月7日~10月31日)に行ってきました。この展覧会は、幕末から明治にかけて日本にやってきた外国人画家が故郷への土産として描いた作品や、日本人画家が外国人向けの土産として制作した日本の風景や風俗を描いた作品が一堂に展示されています。
今回の展示作品は、個人収集家が海外で収集し、日本に帰国させた作品群で、その大部分が初公開となるようです。
展覧会の構成は以下のとおりです。
第0章 序 明治洋画史を眺める
第1章 明治の日本を行く
第2章 人々の暮らしを見る
第3章 花に満たされる
この展覧会では、全部で300点近い作品が展示されており、これでもかこれでもかという具合に古き良き時代の日本の情景が迫ってきます。神社や風景のみを描いた作品では、いつの時代を描いているのかわかりにくいのですが、そこに着物姿の人々の姿が描かれると一気に明治時代へとワープしてしまいます。
第1章では、日本を訪れた外国人画家が日本の各地を旅しながら、日本の風景や日常を描いた作品が展示されていました。彼らが描く油彩や水彩画のレベルの高さには驚かされます。日本をこよなく愛した彼らは、もしかすると、日本人以上に当時の日本を愛していたのかもしれません。
彼らは、大正時代になって急速に近代化が進んでいく状況を見て嘆いたと言います。そうした意味でも、明治までの日本には海外から見ても貴重な情景が詰まった時代だったのかもしれません。
一方で、日本人画家たちによる作品も数多く展示されていました。ここでは、五姓田義松、渡辺豊洲、五百城文哉、大下藤次郎、丸山晩霞、中川八郎といった方々を始め、多数の日本人画家の作品を観ることができます。
第2章では、日本の風俗が垣間見られる作品が展示されていました。外国人は、子どもが子どもの子守をするという日本の風習に驚いたと言います。そうした情景を描いた作品も数多くありました。
また、当時ふんどし一丁で働く人々も多く、服を着る代わりに体に入れ墨を入れていたことも多かったようです。確かに、こうした姿には驚かされることでしょう。
第3章では、花を描いた作品が展示されており、一気に華やいだ気分になりました。第1章、第2章で大量の作品を観て疲れてきたところでしたので、良い気分転換になりました。この展示構成は成功ですね。
海外では、上流階級の人たちが楽しむことが多い“花々”を、日本では上流階級のみならず、農家や商家など一般庶民も庭先で花を育てて楽しんでいる様子に、海外画家たちは驚いたようです。四季折々の草花を愛でる日本人の心は、現代にも連綿と引き継がれていますね。
今回の展覧会は、改めて日本の素晴らしさが再認識できる内容になっていました。着物姿や小さな子どもを背負う子どもの姿、舗装されていない道路など、古き良き時代の日本がここにありました。
この展覧会では、無料の音声ガイドが利用できました。ただし、スマホを利用するタイプですので、スマホの扱いに慣れていないと少し難しいかもしれません。
受付時にQRコードが記載されたカードがもらえますので、スマホでそれを読み取ってサイトにアクセスします。すると無料で利用できる音声ガイド・サイトが開きます。ここで、各章の解説と全12作品の解説を聴くことができます。
ちなみに、美術館内では無料Wi-Fiが利用できます。設定時に自分のメールアドレスを送信し、受信メールに記載されたアドレスをクリックすると本登録され利用できるようになります。
展覧会情報
会場:京都国立近代美術館
会期:2021年9月7日(火)~10月31日(日)
休館日:月曜日、9/21(9/20開館)
観覧料:1,200円(一般)
音声ガイド:無料(スマホを利用)
写真撮影:不可
図録:2,500円
Web:京都国立近代美術館「発見された日本の風景」