展覧会の概要
大阪市立美術館で開催されている、コレクション展「社寺縁起 ― 聖なるファンタジー」と特集展示「井口古今堂と近代大阪 ― 船場の表具師と芸術ネットワーク ―」(会期:2021年9月4日~10月24日)を鑑賞しました。
展覧会の構成
コレクション展、特集展示ともに、章立ては特にありませんでした。
感想①「《犬寺縁起絵巻》に注目」
コレクション展「社寺縁起 ― 聖なるファンタジー」は、特別展「聖徳太子 日出づる処の天子」の番外編のような展示内容でした。社寺の由来を描いた数々の社寺縁起関連作品が展示されていて、大変面白い企画でした。ワンポイント解説が分かりやすかったですね。
特に印象に残ったのが、2匹の忠犬を供養する寺の由来を描いた《犬寺縁起絵巻》です。家来にだまされ殺されそうになったところを2匹の忠犬に助けられ、その2匹に自分の財産を譲ることを決めたある長者の物語を描いた絵巻です。犬の死後、犬を供養するために自分の財産を使って犬寺を建立したそうです。
感想②「中村芳中《萩糸瓜図》が美しい」
特集展示「井口古今堂と近代大阪 ― 船場の表具師と芸術ネットワーク ―」では、表具の老舗「井口古今堂」を中心として展開した近代大阪の芸術が紹介されていました。
この特集展示の中で、私が特に心惹かれたのは、中村芳中《萩糸瓜図》、月岡鉄斎《鼓美人図》、岡本更園《少女図》でした。
中村芳中《萩糸瓜図》は、カラフルな色彩とたらし込みが見事に融合した魅力的な作品でした。月岡鉄斎《鼓美人図》は、鼓を持った女性の躍動的な曲線と品のある顔立ちが何とも心地よい作品です。一方、岡本更園《少女図》は、団扇を持った素朴な少女を描いた作品で、何故か心惹かれるものを感じました。
美術館の所蔵作品を展示したコレクション展では、こうしたお気に入りの作品との出会いがあると嬉しいですね。出会いの喜びは、人間だけでなく美術作品でもあります。美術展は、こうした出会いのチャンスでもあると感じています。
感想メモ
特集展示「井口古今堂と近代大阪 ― 船場の表具師と芸術ネットワーク ―」では、無料のパンフレットが用意されていました。主要展示作品のカラー写真が掲載された立派なもので、実にありがたいですね。
特別展の鑑賞に来られた方は、コレクション展も同時に鑑賞できますので、見逃さずに覗いて欲しいですね。あなたとの出会いを待っている作品がきっとあるはずです。
展覧会情報
社寺縁起&井口古今堂と近代大阪
会期:2021年9月4日(土)~10月24日(日)
休館日:月曜日(9月20日は開館)
観覧料:300円(一般)
音声ガイド:なし
写真撮影:不可
図録:特集展示は無料パンフレットあり
Web:大阪市立美術館「社寺縁起」
Web:大阪市立美術館「井口古今堂と近代大阪」